第十四話「ダム・Kの受難」



『否定の魔女トレヴィーニが本城城下町セントラルタウンに襲撃して、早三日。大国防衛隊の活動によって復旧活動は完了したものの、死者・負傷者合わせて八百人以上……』

 店の端の方に置かれたテレビから、アナウンサーの声が聞こえてくる。
 テレビに目を向けると無数の瓦礫(何故かでっかい氷も混じってる)によって破壊された民家や建物、逃げ惑う人々などが映っている。ちなみに映像は事件当日のものをビデオカメラで撮った人のを使用しているらしい。
 映像の中には巨大氷闘技場、混沌の炎、黄金の暴風に包まれた本城などと、アニメの中の世界としか思えないような光景が映っている。
 けれどもこれは現実。否定の魔女が出現した以上、有り得ない事柄など存在しない。すべては、否定の魔女の思うとおりに動いていくのだ。
 それを示すニュースが流れる中、ナグサ一行はというと。

「ミルエちゃん、ほっぺにご飯粒ついてるよ」
「ほえ?」
「あ、こら。舌で口の周り舐めとって取ろうとしない。下品だよ」
「そうだよ。女の子なら、もーちょっと気にしないと」
「はーい! あれ、ちるちゃん食べないの?」
「あたしは人形だから、食べたくても食べれないの。でも見てるだけでお腹いっぱい!」
「……それなら何故ツギ・まちは食べれるんだ?」
「? ~~」
「わかんないみたい。でも今はラーメン食べたいって!」
「ラーメン二杯目なんですけど」
「ミルエもおかわりしていーい?」
「駄目。チャーハン三杯目は経済的にきついから」
「むーっ。ナッくんのケチ」
「ケチで結構」
「相変わらず仲良しだね、ナグサ君とミルエさん」
「!」

 呑気に中華料理食べてました。第二章から一転して凄いほのぼのしてます。
 今現在ナグサ一行はサザンクロスタウンの近くにあるパーキングエリアにて、中華料理を食べているところだ。
 人形屋敷から脱出して以降次の目的地に向かっていたのだが、予想以上に距離があった為にヒッチハイクしたり、近くの小さな町に寄って地図を貰ったりしながら、進んでいる真っ最中だ。
 後もう少しでサザンクロスタウンに到着できるという位置まで来ており、資金の都合上(主にミルエとツギ・まちの食費)により、ここからは出来る限り歩いていこうとナグサは考えている。
 今はとにかく最後に残った餃子を食べようと、箸で餃子をつかんだその時だった。

「く……食い逃げええええええええええええ!!!!」

 店員が悲鳴にも似た大声を上げたのは。
 四人が思わず振り返ると、三度笠を被った男とでっかい茶碗を被った男が慌てて店から出ていったのが見えた。その後を一人の店員が追いかけようとするものの、ヨーヨーで撃退されてしまっている。
 こんな時代にやるか、普通? とナグサは呆れながら、餃子を口に入れようとするが……手ごたえが無い。何故だろうと思い、箸を見ると餃子が無い。嘘だろと思いながら、床を見ると餃子が落ちていた。
 どうやら自分は食い逃げに思わず振り向いた時、餃子をポロリと落としてしまったようだ。

「も、もったいない……!」

 せっかく大食い二名から死守し、最後までとっておいたというのに!
 精神的にでかいショックを受け、凹むナグサ。その横でミルエとツギ・まちは顔を見合わせ、互いに驚きと嬉しさが混じった顔で話し出す。

「今の二人って、タビタビとチャチャだよね?」
「! !!」
「だよね! うわぁ、久しぶりに見ちゃった見ちゃった! 会いに行く?」
「~~!!」
「さっすがまっちん! んじゃ、ナッくん、ちるちゃん、準備準備!!」

 ワクワクした様子でナグサとちるに言うミルエ。
 ちるは頭に?マークを浮かばせながらも頷き、ナグサは意気消沈からすぐさま回復して尋ねる。

「準備って何の?」
「お友達見つけたの! だから食い逃げして、追いかけるの!」
「はぁぁぁ!? え、お友達!?」
「うん! タビタビとチャチャ。さっき食い逃げした二人~!」
「わーーーーーっっっ!! それ以上は言っちゃ駄目えええええ!!」

 大声でとんでもない事を話すミルエの口を慌てて塞ぐナグサ。
 しかし時既に遅し。四人の下に店員が近づいてきて、机の前まで来ると勢い良く伝票を叩きつけるように置く。「バンッ!!」と大きな音が響き渡り、四人を含む客みんなが思わず店員を注目する。
 店員は注目を気にせず、何か黒いオーラを纏わせながら口を開く。

「食い逃げとお友達っちゅーの聞かせてもらったで?」
「いや、えと空耳ではございませんでしょうか……?」
「アホ抜かせ。お前が彼女の口ふさいだ時点で、空耳ちゃうってのは分かっとるんや。それよりもや!」

 店員は伝票から手を放し、その金額をナグサに見せ付ける。

「食い逃げした連流の代金、代わりに払わんかい! 友達なんやろ!?」

 ナグサはそれを見て、一瞬目の前が真っ暗になって倒れそうになった。0の数が一つ二つ多いっつーか、注文量があまりに多すぎる。
 とてもじゃないが払える金額ではない。ただでさえお金が無いというのに、こんなところで削られたくは無い。
 下手にごまかそうとしても、相手はバッサリ切り落としてくる。これは生半可な対応では勝つ事は不可能であろう。
 だったら、やる手段は一つ。ローレンも怯ませた“アレ”だ。

「失礼ですが友達の定義というものを知っていますか?」
「は?」
「友達というのは本来どういうものなのでしょうか? 自分に尽くしてくれる人なのでしょうか、自分を助けてくれる人なのでしょうか、自分と一緒にいてくれる人なのでしょうか、代わりに代金を払ってくれる人なのでしょうか。否! 断じて否!! 友達というのは心の支え、共に助け合い進んでいくもの、何かを確かめ合う時に必要な存在、そして掛け替えの無い存在!! もし自分が疑心暗鬼になろうとも、友達は一つのことを行う! そう、それは信じるということ。友が狂おうとも、罪を犯そうとも、見えなくなろうとも、友達ならば信じるのみ! 友が正気に戻るのを信じ、戦う! 戻らなければ、拳で殴ってやればいい!! そう、友達ならばこういうシチュエーションも可能!! 友達は青春を全うする為に必要なものであり、時として庇い合い見捨て合う!! はい、そこ言ってる事無茶苦茶とツッコミ入れない! 僕の言いたい事は伝わっている筈だろ、名無しの店員A! 友達というのは誰かのお金を払う為に存在しているのではなく、共に笑い、共に喜び、共に支え合って生きていく唯一無比の存在だということをおおおおおお!!!!」

 速攻固有結界:口先の魔術師発動!!
 凄まじい勢いで語りだし、相手を圧倒する凄まじい技である。尚、これは一回やると肺活量的にきついのでタイミングを持って行いましょう。
 名無しの店員Aはナグサによる固有結界により、タジタジ。「もっ、どー反応すればいいのかわかんにゃいの」状態。(というか名無しじゃないからby店員A)
 ここで一旦ナグサは口を閉じる。直後、ミルエが勢い良く店員A目掛けて飛び蹴りを食らわせた。

「ちぇすとー!」

 可愛らしい掛け声とは裏腹に蹴られた店員Aは見事に転び、向かいの机の角に頭をぶつけてしまう。大きなタンコブまで出来ちゃって、すっごい痛そうだ。
 ナグサはツギ・まちが纏めておいた自分の荷物を受け取りながら、三人に指示する。

「全員、逃げろー!!」

 そのまま三人は机から離れ、我先にと店から出ていく。ちるはツギ・まちの頭にしっかりつかまっているので、ご安心を。
 もちろん勘定は払っていないので、彼等も食い逃げしたって事になりますね。

 ■ □ ■

 結果的に自分達も食い逃げをする羽目になってしまい、ナグサは申し訳ない気持ちでいっぱいになってくる。けど今はそんな事考えてる暇はない。
 だって。

「逃がすかー! このボケナスどもがぁ!!」

 あの名無しの店員Aが追いかけてきたんだから。
 両手に包丁を装備。何故か包丁には炎が宿っており、しかもそれを投げてくるから物騒極まりない。今はミルエが撃ち落としているものの、それでも防ぎきれるかどうか分からない。

「このリクから逃げようなんて甘い考え、通ると思ってんのかああああああ!!!!」

 名無しの店員Aこと、リクが両手に多くの包丁をもち、四人目掛けて投げる。
 ミルエが走りながら振り返り、包丁のいくつかを撃ち落としていく。大抵のものは刃を撃ち貫かれ、勢いを失って地に落ちていく。それでも幾つか取りこぼしがあるけれども、ナグサが吸い込みを行って包丁が仲間に当たるのを回避させ、リク目掛けて吐き出していっている。最初ツギ・まちが防御しようとしたのだが炎攻撃に弱い人形である為、とんでもない結果になる可能性がある。
 それは勘弁という事で、リクの攻撃に対してナグサとミルエが対処しているのだ。
 だがどんなに包丁を落としても、リクはしつこく追ってきている状態。このままではこちらの体力が先に尽きてしまう。
 どうするべきかとナグサが考えようとしたその時、ミルエが声を上げた。

「あーーーーっ!!」
「な、何!? しょーもないことだったら怒るよ!」
「あれあれあれあれあれ!!」

 ミルエが連呼しながら、ある方向を指差す。ナグサがその方向に目を向けると、そこには先ほどの食い逃げ二人組が止まったトラックの荷台に乗り込もうとしている真っ最中であった。
 それを見たナグサはミルエが何を言いたいのか理解した。

「ミルエちゃん、良くやったー! 全員、トラックに飛び乗るよ!」
「わかったー!」
「~!!」
「お、落ちないようにがんばりまーす!」

 三人は走るスピードをあげ、トラックに急接近する。
 しかし二人組みが乗り込むと共にトラックは動き出し、彼らから離れていく。
 それを見た彼らは走るスピードをさらに上げ、まずミルエがジャンプしてトラックにつかまり、強引に乗り込む。

「おりゃああ!!」

 いきなり飛び乗ってきたミルエに驚き、トラックは急ブレーキをかける。
 その隙にツギ・まちとナグサが続けて飛び乗ってくる。ちるもツギ・まちの頭にしっかりしがみつき、落ちていない。

「な、何だ何だ!?」
「話は後! 今は出発してください!!」

 先客の男が驚くものの、ナグサは気にせず出発を急かす。
 それを聞いた運転手が慌ててアクセルを踏み、トラックを再度発進させる。
 リクが追いかけるものの徐々にスピードを上げていくトラックには追いつけず、食い逃げ軍団を惜しくも逃がしてしまう。

「か……金はらわんかあああああ!!」

 リクの叫びが響き渡り、トラックにも届く。けれどもトラックは無視して突っ走るだけだった。

 ■ □ ■

 絶叫が聞こえる中、ナグサは離れていくリクに両手を合わせて「ごめんなさい」と謝る事しか出来なかった。
 他人のツケ払うのが嫌だからって理由で、自分達も食い逃げしてしまったからだ。ミルエ達にも出来る限り抑えさせて、ちゃんとお金を払おうと思っていたのに。
 ここで後悔しても何にもならないのは分かっているものの、根は真面目なナグサは落ち込まずにはいられなかった。

「こんなところで犯罪重ねてどうすんだよ……」
「コッペリアに比べればずっとマシでしょ、地雷君」
「そりゃそうだけど、僕個人としては良心が痛む。ってちょっと待て」

 聞き覚えのある声と単語にナグサが振り向く。
 そこにはトラックの端の方でのんびりと欠伸しているローレンの姿があった。

「な、なな、なんでお前がここにいるんだ!?」

 人形屋敷事件にて共闘し、その後は別々の道を行った筈の狂気の人形屋。
 慌ててカルベチアも探すと小窓を通し、トラックの助手席に乗っているのが見えた。
 いや、だから何でいるわけ? とナグサが困惑している中、ローレンは呑気に答える。

「何でってこのトラック僕さま等のだから。で、地雷君達食い逃げ軍団が来たわけ」
「正確にはトラックと運転手はグリーンズから頂いたんですけどね」
「要するに盗難車か、これ」

 カルベチアの追加説明も聞き、ナグサは頭痛がした。
 ローレンもカルベチアも危険人物と言われるほどの犯罪者だから、このぐらいやっても不自然ではないのだが一度知り合ってしまうと、複雑な気持ちになってしまうものだ。
 多分注意しても聞かん連中だろうな、とため息をつく。

「はぁ。まぁ、助かったからこの問題はひとまず置いておこう。それよりも君達どこに向かってるの?」
「サザンクロスタウンだよ? グリーンズでちょっと派手にやっちゃったから、慌てて逃げてるの」
「しかしあの薔薇は凄まじかった……。シードという人、かなりの実力者ですね」

 シードという名前を聞き、ナグサは納得した。
 グリーンズの守護担当であるシードさんを何らかの事情で怒らせてしまい、そのまま激闘にって形になったのだろう。で、戦局が不利になったからトラックを奪い、運転手兼人質を連れ去って逃げた。その逃げている最中に、別れた筈の自分達と再会した。
 そんなところだろうとナグサが勝手に納得する中、ちるがとてとてと近づいてくる。

「ナグサ君」
「ん? ツギ・まちから降りたの?」
「うん。何だか入りづらくて……」

 ちるが横目でミルエ達を見ながら言う。つられてナグサも見る。
 そこには先に食い逃げした二人の男と仲良く談笑するミルエとツギ・まちの姿があった。
 見た目からして両方とも風来人だろう。そんな二人とミルエの接点なんて食い逃げぐらいしか思いつかないのだが。
 一緒に見ていたローレンは不意につぶやく。

「夜明の生き残りなのかな、あの二人」
「だろうね。あーいう格好する人、夜明国の人ぐらいだろうし」
「夜明国? あの、それは何?」

 ちるは知らない国の名前が出てきて困惑する。

「かつて東にあった和の国の事だよ。ただ、世界大戦中に起きたダイダロスの軍勢によって滅んじゃったんだけど」
「だいだろす?」
「あ、それも知らないのか。ダイダロスっていうのは、ぶっちゃけゾンビの事。魔女トレヴィーニの力によって歪んだ生を与えられ、人肉を求めて彷徨う死者の事さ」
「確か触れただけでも感染して、無限に増え続けるんでしょ? 全ダイダロス駆除に一ヶ月はかかったって聞いたし」
「うん。世界大戦史上、魔女が起こした事件の中で最悪と呼ばれているぐらいだからね」
「な、何だか怖い……」

 ナグサとローレンの説明を聞き、ちるは怖くなってナグサにしがみつく。しがみついてきたちるを優しく撫でるナグサ。ちるは撫でられ、顔を赤くして俯いてしまう。
 それを眺めていたローレンはニヤニヤ笑う。

「いやー、さすがは王子様だねー」
「何がだ。ってそういえばちるちゃんやツギ・まち前にしても襲ってこないけど、何で?」
「ヤンデレコッペリアはもう勘弁だし、地雷君には恩があるからね。何も無かったら問答無用で奪ってたけど、地雷君に救ってもらえたから襲わないって事にしたの」
「出来ればそのあだ名をどうにかしてほしいけどね。襲わない事には感謝するけど」
「あー、無理。あの地雷大好き踏みまくり見た後じゃ、ねぇ?」
「ねぇ? じゃないよ。こっちとしては違う意味でとられそうだからやめてほしいの」

 ナグサとローレンがそんな会話を弾ませる隣。
 ミルエとツギ・まちは久しぶりに出会った友人達と楽しく談笑していた。

「そんでね、ナッくん、ちるちゃん助け出したの!! でね、げんそーくーかんからも抜け出せたんだよ。あれはすごかったね、まっちん」
「~♪」
「おいおい、前々から色々してるのは聞いたけど、そこまでやるとは思わんかったぜよ」
「ミルエだって入るとは思ってなかったもーん」
「悪いとは誰も言ってないでござるよ。タービィも拙者も少々驚いただけだから安心せよ」
「ほえ? チャチャとタビタビ、こーいう冒険した事無いの?」
「「無い」」

 というかあってたまるか。
 二人の風来人チャチャとタビタビ、及びにチャ=ワンとタービィは同時にそう思った。

「ところでミルエ殿達はどちらに?」
「サザンクロスタウンだよ。マナ氏って人に会わなきゃいけないんだ」
「マナ氏……って、確か否定の魔女とまともにやりあった兄ちゃんだっけ?」
「そうでござる。世界大戦時、否定の魔女トレヴィーニと唯一対等に戦い合えた魔法使い。その魔力には底が無く、無限の魔法使いとまで呼ばれているでござるよ」
「おおー! 何かかっこいー!」
「でもよ、ミル公。何でそんな野郎に会わなきゃなんねーんだ?」
「えーと、色々ありましてー」
「そっか。色々か」

 そんな他愛も無い会話を続ける彼ら。
 やはり、思いがけないところで遭遇する友達というのはいいものだ。……その切欠が食い逃げという事実はあんまり認めたくないものだが。
 その後も話が発展していき、全員の目的地がサザンクロスタウン(ナグサ一行はマナ氏に会う為に三日月島へ。ローレン達はグリーンズからの逃亡。風来コンビは買出し)だという事も判明し、このまま行く事にしようという話になった。この時、拉致られた運転手が涙目になったのは気のせいではない。
 追っ手のリクも諦めたらしく、思わぬ車も手に入って夕暮れまでにはサザンクロスタウンには着くだろう。そんな感じで一同がのんびりとしている中、タービィがミルエにとんでもない事を尋ねてきた。

「そういや、あの黄色いボウズだけど」
「ほえ? ナッくんがどーしたの?」
「ミル公の旦那かい?」
「ぶふっ!!」

 タービィの爆弾発言に、ナグサが飲んでたお茶を吹いた。吹いた茶がローレンの顔面に直撃した。

「ぎゃー! きたなーい!!」
「あ!? ご、ごめーん!!」
「ローレン殿、タオルはここにあるから落ち着くでござる。ナグサ殿も動揺しすぎでござる」
「いや、でも、えと、その……!!」
「な、ナグサ君の顔が真っ赤な誓い並に燃えてるよ!?」
「ダイダロス知らないのに、何で真っ赤な誓いは知ってるんだ!?」

 顔を真っ赤にして慌てふためくナグサだけど、ツッコミは忘れなかった。
 チャ=ワンから渡されたタオルで顔面を拭くローレン。状況についていけず、おろおろするちる。あまりにも分かりやすい反応に呆れるチャ=ワンとツギ・まち。その横でミルエがこっそりタービィに耳打ちしているのに、誰も気づかない。
 トラックの荷台でのどたばた劇をミラー越しに眺めながら、カルベチアはため息をつく。

「全く、子供の遠足ですか」

 何処か呆れているように見えるが、満更でもないようだ。
 その横で運転している男は話さない。否、口が無いので話せないだけだ。
 大きな花びらを体から生やした一つ目の男、ダム・Kは内心とんでもない事になっていた。

(ほのぼのされても困るんですけど。というか、ほんと、そろそろ降ろしてくれませんか?)

 元々本城勤務だったというのに、黄金の風に吹き飛ばされてグリーンズへ。
 復旧作業に来た部隊に無理矢理手伝わされてしまい、中々帰れなかった。しかしついさっきグリーンズの復旧作業も終わり、ようやく戻れると思った矢先に狂気の人形コンビであるローレンとカルベチアに拉致られてしまい、無理矢理トラックの運転手をさせられているのだ。
 しかもその後、食い逃げ六人も無理矢理乗り込んできてしまい、何か楽しそうに談笑している為、逃げたくても逃げれない状況下になっちゃってる。
 否応でもサザンクロスタウンに行かなきゃなんない現状に、ダム・Kは心の中で「魔女のバカヤロー」とつぶやいたのだった。



第三章「サザンクロスタウン」開幕



次回「登場人物達」


  • 最終更新:2014-05-28 00:05:23

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