第十八話「VS戦闘狂オルカ!」


 ナイトメアシティで行われるハンターと生き残りの戦い第一回戦。
 ナグサVSオルカがこれより、開催されます。
 パソコンの前のオリカビ大好きな良い子悪い子普通の子は部屋を明るくして、パソコンから離れて見てくださいね。

 ■ □ ■

 電磁フィールドによるバトルステージの中、ナグサとオルカはそれぞれ武器を構えて相手を睨みつけている。
 ディミヌ・エンドによって隔離されたメンバーはただそれを見守る事しか出来ない。
 オルカがディミヌを使って出した三つのシャボンも消えてしまっており、もうそれを利用する事は不可能となっている。
 ナイトメアシティの一回目の戦いがこれより、始まる。

『れでぃー……ふぁいとっ!』

 ディミヌが戦いの合図を送る。
 先に動いたのはオルカ。オルカは己の愛用長槍「百戦練磨」をナグサ目掛けて何度も何度も突いて突いて突き続ける。
 ナグサは咄嗟にカッターでガードするものの、向こうの攻撃が激しくて全てを防ぎきれない。何とか急所は免れているものの、防ぎきれなかった突きが頬などにかすって傷を作っていく。
 オルカは暫く突き続けた後、百戦練磨をある程度引かせる。
 それに応じてナグサは素早くオルカの懐に入ると至近距離からカッターで連続切りを行う。上から下へ、下から上へと流れるように切りつけ、上からトドメとも言える渾身の一撃ファイナルカッターを与える。
 ファイナルカッターをまともに喰らったオルカは体をふらつかせるものの、すぐに体勢を整えて目の前にいるナグサを見る。

「まぁまぁ……ってところだな。お前さんからして、俺はどうだい? ハンデはやっぱり必要か?」

 ファイナルカッターによって出来た大傷が自動で回復していくオルカの体。
 人形屋敷の時にコッペリアで慣れたナグサは大して驚かず、自信満々に答えるのみ。

「いいや、いらないね。十分戦い合えるのは分かったから!」
「そうか。それなら良かった!!」

 ナグサに返事しながらオルカは至近距離にいたナグサの顔面に拳を入れる。
 ナグサは咄嗟に拳を避け、転がるようにオルカの横に移動するとカッターを手に持って剣のように切り付ける。
 オルカはその攻撃を避ける事無く受け止める。ダメージはあるもののまったく気にしていない様子で、長い百戦練磨を勢い良く振って横からナグサを叩きつける。
 叩かれたナグサは勢いに負けて吹き飛んでしまうものの、電磁フィールドにぶつかる直前で止まって何とか立ち上がる。

 その様子を見てディミヌによって小型電磁フィールド内に閉じ込められていたメンバーの内、ちるが声を上げる。

「な、ナグサ君大丈夫ですか!?」

 ナグサからの返答は無い。彼は目の前の敵と戦うので必死だ。
 一方で戦闘状況を冷静に分析していたクレモトはオルカの能力を推測する。

「再生能力、か。これはナグサ君不利だね」
「うん。カッターはちまちま攻撃して体力削らなきゃいけないから、決定的な一撃に欠けちゃう」

 ミルエもクレモトに同意する。その表情は心配でたまらないといった様子だ。
 いくら信じているとはいえども、戦士としてはハッキリ言ってミルエの方が上だ。
 元々ナグサは後方でのサポートか戦闘解説タイプだ。オルカのような戦闘狂と戦うにはあまりにも無謀すぎる。加えてナグサのコピー能力はカッター。使いやすい能力である反面、一撃一撃が低威力である為に決定的な攻撃を加える事が出来ない。
 せめてオルカが出したシャボンを取っておけばまだ何とかなった可能性は高い。特に「強すぎ」って噂のトルネイドを逃したのは痛い。
 ナグサの勝機が見えない戦いにミルエがあせりを感じる中、同じように分析できた絵龍が声をあげる。

「それじゃ勝ち目薄すぎないっすか!?」
「というよりもオルカ相手に挑発して本気出させた時点で馬鹿なのが確定してるよ」

 クレモトは珍しく呆れた表情を全面に出す。
 ナグサ程の賢さの持ち主ならば挑発をしたらどうなるか結果は見えていた筈なのだが、悲しい事にナグサはギャンブラー魂(本人は否定してる)を発動させてしまいやってしまった。
 その様子はハッキリ言って馬鹿としか言えなかった。
 けれども何故かクレモトはナグサがそう簡単にやられるような存在とも思えなかった。

「……多分怒られるだろうけど、準備はしておくかな」

 だが保険も必要だと思い、クレモトは視点をナグサとオルカから戦況を黙って見ているポチに向けた。

 オルカが走り出し、無駄に長い百戦練磨でナグサを突き刺しにかかる。
 ナグサは体をそらしてギリギリかわすとカッターを複数回オルカに向かって投げる。オルカはまたも避ける事無く全てのカッターをその身で受け止める。
 ナグサの攻撃が終わったのを狙い、オルカは百戦練磨を一旦手放すと急接近してナグサを片手でつかむとそれを軸にして勢い良く回し蹴りを入れる。
 かわす事が出来ず、ナグサは衝撃で吹き飛ぶ。
 オルカはすかさず百戦練磨を手に取りナグサを勢い良く叩いて追い討ちをかける。
 追い討ちまでやられてしまい、より吹き飛んでいくナグサは電磁フィールドへと体をぶつけてしまう。
 全身に電撃が襲い掛かり、ナグサの体を傷つけていく。あまりの衝撃に吐血しながらもすぐに電磁フィールドから抜け出し、これ以上のダメージが増えるのを防ぐ。
 電気がバチバチと体に帯電しており、誰の目から見てもナグサの体には先ほどの電撃の余韻が残っているのが分かる。
 ナグサは右手で口についた血をふき取る。ふき取った直後、ナグサに帯電した電気の形が変わっていく。その帽子もカッターによるものだった筈が所々に緑色の炎、いや雷が宿り出していく。
 黙って戦闘を眺めていたディミヌは驚愕し、思わず身を乗り出してしまう。(といってもモニターからなので、あんまり意味無いが)

『うっそ!? 何でプラズマコピーしてんのー!?』
「馬鹿、何驚いてやがる。こんなのたいした事無いだろうが」

 オルカは意外にも冷静で、逆に観戦者のディミヌを叱るぐらいだった。
 一方で隔離されているメンバーも呆気にとられている状態。いち早く我を取り戻したクレモトが力なくツッコミを入れる。

「……いや、たいした事あるって。今の結構荒業だよ」
「え? え? あの、ナグサ君何やったんですか?」
「ナッくん、自分に帯電してた電気口の中に入れたんだよ。多分血を吹いてた時じゃないかな」

 把握出来ないちるに対し、ミルエは説明する。
 それでもあのコピー方法は荒業だ。何せコピーする場合ある程度明確な力を持った物体でないと、ただの空気や障害物とみなされてスカとなる。
 今回の場合も本来スカになる筈だが、ナグサは荒業を使ってプラズマをコピーした。
 一部を除いてプラズマコピーに観戦者達がその原理に気づく中、オルカもすぐに気づいているらしくナグサに話す。

「テメェん中の魔力を使って、強引にコピー可能にさせたっちゅーわけか。それ疲れるから普通やらねぇだろ、おい」
「確かに。さっき一瞬クラッて倒れそうになったよ」

 その返答を聞いた一同はずっこけそうになった。ただしナグサとオルカは除く。
 だったらやるなよ、と内心でツッコミを入れた者はきっと読者の中にもいるであろう。
 だがナグサは疲れを微塵も感じさせない様子で右手を前に出して、オルカに向かって言った。

「でも、僕はここで倒れるつもりは全く無いから」

 同時に右手から黄色の電撃がほとばしり、細長い棒の形となる。それは一見するとビームサーベルにも見えなくはない。
 中心部分をつかみとり、ナグサは新たに出現した武器……スパークカッターをオルカに向ける。その目は未だ戦う事をやめようとしていない良い意味で馬鹿者の目。
 無理矢理コピーなんてもの、常人ならば普通やる判断ではない。だがナグサはそれを惜しむ事無くやってみせた。
 オルカはあまりにも馬鹿げたそれを見て、心底面白くてたまらないと言った様子で高笑いを上げる。

「くくく、ひゃーはっはっはっはっは! こりゃあのウォーモンガーも気に入るわけだっ!!」

 そう言うと即座に笑うのを止めて、百戦錬磨を大きく振り上げてからナグサに矛先を突きつけて叫ぶ。 

「――狂気の沙汰ほど面白い!」

 その言葉と共に、百戦錬磨で再び連続突きを入れる。
 ナグサはスパークカッターの形を円盤状の盾に転換させて防御するものの、向こうの攻撃力の方が高くやはりダメージを与えられてしまう。
 だが負けじとプラズマを発動させ、矛先からオルカ目掛けて通電させる。
 電撃を喰らったオルカは一瞬怯み、攻撃の手を緩めてしまう。それを見たナグサはスパークカッターを本来の形に戻してオルカ目掛けて投げつける。
 さすがに喰らったらやばいと判断したらしいオルカは横にジャンプして攻撃をかわす。
 ブーメランのように戻ってきたスパークカッターをナグサはキャッチする。一旦スパークカッターを引っ込めさせて、代わりに全身に緑色の電撃を出没させる。
 次の攻撃が何か気づいたオルカがその攻撃を止めさせようと百戦錬磨で再びナグサに一撃を入れようと突きにかかる。今度はどの攻撃よりも素早く避けきれない。
 だがナグサはそこから動かず、己の中に貯めた電撃を己と同じぐらいの大きさのプラズマ波動弾に変えてオルカ目掛けて発射する。
 プラズマ波動弾は物体である百戦錬磨をすり抜け、ただ真っ直ぐに敵目掛けて飛んでいく。
 オルカもまた怯まず、百戦錬磨が封じられていない事を良い事にその矛先でナグサの左手を貫いた。ナグサが大きな悲鳴を上げる。
 同時にプラズマ波動弾がオルカに直撃し、彼に大きなダメージを与えてその身を吹き飛ばさせる。

「ナッくん!」「ナグサ君!!」「~!!」『オルさーん!!』
「痛い! 今のは痛いって!!」
「あうあうあうあう、こりゃやばいよ……」

 観戦していたメンバーが目の前で繰り広げられた相打ちに悲鳴に近い声を上げる。
 唯一クレモトは何も言わず、ただナグサとオルカを交互に見ているだけだ。

 衝撃が強かったものの、電磁フィールドの一歩手前で踏ん張り息を切らしながらもオルカは立ち上がる。
 強力なプラズマ波動弾を喰らった事により、オルカの全身はやや黒こげになっている。ダメージも大きかったせいでか再生にも時間がかかり、足元がふらついている。
 一方のナグサも左手を貫かれてしまい、激痛が襲い掛かっている為その場に座り込んでしまう。元々オルカの突きも全て封じ切れていたわけでなく、このままでは長くは持たないのが読み取れる。
 どちら共に大ダメージで、後一発喰らったら終わるという状態だろう。
 もちろんそれを逃す馬鹿はいない。オルカはナグサから百戦錬磨を引き抜き、ある程度の距離をとる。
 抜かれた事により左手から血が凄い勢いで出血し更にナグサへ激痛が走る。あまりの痛みに耐え切れず、帽子が元の形状へと戻ってしまう(=すっぴん化)。
 ナグサが動くよりも早く、オルカが百戦錬磨で貫こうとしたその時。

『オルさあああああああん! にぃげぇてぇぇぇぇぇぇ!!』

 ディミヌ・エンドが凄い焦った口調で叫んできたのは。
 同時に電磁フィールドをぶちやぶり、戦闘を行っていたナグサとオルカ目掛けて宅配便のトラックがつっこんでくる。
 全員がつっこんできた宅配便のトラックを目撃した時点で、遅かった。
 誰かが口を開くよりも、体を動かすよりも、力を発揮するよりも早く、宅配便のトラックはナグサとオルカに突撃した。
 傷が大きかった二人はなすすべも無く、跳ね飛ばされてしまった。

 ■ □ ■

 空中に二体のカービィが投げ出される。死闘を繰り広げていたナグサとオルカがなすすべもなく、飛んでいく。
 宅配便のトラックという誰もが予想していなかった乱入者によって。
 突撃したショックで電磁フィールドも消滅し、隔離されていたメンバーも行動が自由になる。
 ポチが翼を羽ばたかせ、空中に投げ出されたナグサとオルカの下に飛んでいき、二人を素早くキャッチすると上に跳んでトラックを回避する。
 宅配便のトラックはそのまま電柱にぶつかり、黒い煙をあげながら止まる。

『生体反応ゼロ! でも運転席にも荷台にも動く固体ありまくりって事は……ダイダロスの連中!? もーっ、何でこんな馬鹿げた行動するのさー!! 怒られるの私なのに~!!』

 ディミヌが素早くトラックの中に乗り込んでいる人物について調べ上げ、半ばイラッとした口調で叫ぶ。
 同時にトラックの荷台の戸が勢い良く開き、その中に乗っていたダイダロス達が飛び出していく。その手にはそれぞれ鉄パイプを持っており、通常タイプとは違っている。
 しかも何故か走れるタイプらしく、さっきとは比べ物にならない速さでミルエ達に襲い掛かる。

「邪魔っ!!」

 ミルエが二丁拳銃を素早く手に取り、こちらに向かってくるダイダロスの右目を正確に撃ち抜いていく。何体かが倒れていくものの、後方に隠れて無事だったダイダロスが再度迫ってくる。
 ミルエが再度発砲しようとする前にツギ・まちが走り出し、一番前まで駆け寄ってきたダイダロスの顔面目掛けてドロップキックを入れた。
 そのまま後ろに宙返りし、体勢を整えるとミルエが先に倒したダイダロスの落とした鉄パイプを手にとって野球のバッターの如く構える。そしてギリギリまで近づいてきたダイダロス達目掛けて振る、振る、振って振って振って振りまくって大打撃を与える。
 頭がへこんだり、顔がへこんだり、吐血したり、ぶっ飛んだりと同情しそうな状態になっていくダイダロスに対してミルエは追い討ちをかけるかのように右目を次々と撃ち貫いていく。
 その様子を眺めていた絵龍はポカーンとしていたが、ハッと我に帰った時は思わず声を上げてしまった。

「……つ、ツギ・まちやっぱ強ぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ダイダロス化しないし、食料ともみなされてないから故の強さだね。……ってかこれ、何時からストリートファイトになったんだっけ」
「え? えーと何時からでした?」
「いや、自分に聞かないでほしいっす!」

 クレモトの呑気な呟きを聞き、何時の間にかクレモトの頭上に移動していたちるが首を傾げる。絵龍はそれに答える事が出来ず、とりあえずツッコミを入れた。
 ミルエとツギ・まちの連携プレーにより、ダイダロス達がやられていく中、ディミヌの映ったモニターに重なるように小さな画面が出没する。その画面は砂嵐となっており、誰が映っているのかは分からない。
 砂嵐の画面から、複数の男女が重なり合った声が聞こえてくる。

『アーアー、こちらキング。こちらキング・ダイダロス。俺からのプレゼントは気に入りましたかー?』

 その声を聞き、一同が一斉にディミヌの映ったモニターを見る。
 キング・ダイダロス。今このナイトメアシティに蔓延る死霊達を統治する王であり、否定の魔女以外で唯一指示を出す事の出来る者。九年前の事件で本来ならば消滅した筈なのだが、こいつもまた否定の魔女の手で蘇ったのだろう。
 わざわざ通信して、こんなことを口にするというのは事実と見てまず間違いは無い。
 つまり二人の戦いを破壊した張本人であるキング・ダイダロスに対し、真っ先に反応したのはディミヌであった。

『何やってんの、この馬鹿殿ー!!』
『うおっ!?』

 明らかに怒ってるディミヌに対し、キング・ダイダロスはびっくり。
 ディミヌはモニターの中で耳をばったんばったん上下に振りながら怒る怒る。

『オルさんに思い切り怒られるどころか、ナグサ君殺ったらトレ様に大目玉喰らいますよー!!? 知らない、私知らない! 切れたトレ様相手にしたくない!!』
『俺だってキレヴィーニ出現なんていう自殺願望者も真っ青末路に行きたくないっつーの。でもま、大丈夫大丈夫。若葉ボウヤに聞いたら「運だけはトレヴィーニクラス」って言ってたから、多分そいつの悪運も強いっしょ』
『……まぁ、トラックで空飛んでサザンクロスタウンに入るなんて人生賭けたギャンブルやって大成功しやがった人ですからね。納得しないわけではありませんけど』
『でしょ? それにオルカは不死身なんだし、この程度じゃ死なないって』
『むむむ……』

 全く悪びれた様子も無く、平然としてるキング・ダイダロスの結構屁理屈な説明を聞いて納得しかけのディミヌ。お前、それでも機械反乱を起こした首謀者か。
 その隙に二人を救出していたポチが一同の下に戻ってくる。ミルエがナグサを受け取り、クレモトがオルカを受け取る。トラックの突撃で二人とも気絶している。
 ちるは身を乗り出し、ナグサの無事を問う。

「ナグサ君は無事ですか!?」
「呼吸はしてるから死んではいない。でも凄くヤバイ状態だよ」

 ミルエがナグサの怪我の様子を見ながら答える。
 オルカとの戦闘で防ぎきれなかった切り傷が多く、そこから僅かだが血が出ている。しかし特に酷いのは百戦錬磨によって貫通してしまった左手だ。最早使い物にならない上に壊れた水道の如く、血が出続けている。先ほどのトラック激突により、傷口が更に悪化しているらしく左手を中心にして赤に染まっていっていく。
 荷物の中から元気ドリンクを取り出し、無理矢理飲ませるけれども出血の勢いを弱めてくれるだけだ。これほどの重傷はマキシマムトマトじゃないと回復できない。
 続けてツギ・まちがどこからともなく取り出した布を使い、左手を縛って応急処置する。
 しかしこのままではナグサが力尽きるのは目に見えている。何処か医療施設か回復アイテムの整っている場所を探さなくてはいけない。
 ミルエはナグサを抱えながらクレモトに尋ねる。

「くれもっち、立てこもりに使えそうなところってどんなとこ?」
「小型のスーパーマーケットだよ。元気ドリンクやマキシマムトマトみたいな回復アイテムがあるかどうかは分からないよ」
「そう。そんじゃ、ナッくんお願いしていーい?」
「……病院は南エリアにあるけど、自分の腕を過信しすぎないでね?」

 ミルエの言いたい事を理解したのか、クレモトは答えながらも忠告する。
 ツギ・まちにナグサを渡した後、ミルエはくるりと回りながらクレモトに振り向くとウインクしながら答えた。

「大丈夫。ミルエはレッドラム一の泥棒なんだから!」

 そう言ってミルエは二丁拳銃を握り締め、元来た道を戻るように走り出す。
 ちると絵龍とポチが止めようとするものの、クレモトとツギ・まちに止められてしまう。三人が困惑するけれども、二人は顔を左右に振る。

「ボク達はナグサ君の処置を優先する。ツギ・まちがナグサ君を抱える事になるから、戦闘は実質ちるちゃんとポチ君だけになる。さすがにそれは危険だからボクも戦っていくよ」
「え? クレモト、近接戦闘しか出来ないんじゃなかったの?」
「それ嘘。ほら、無駄話は良いから早く行こう」
「……あのー、もしかしてオルカも持っていく気じゃないっすよね?」

 移動を急かすクレモトだったけど、絵龍の問いかけを聞くと絵龍にとっては今回始めて見るであろうと~っても素敵な笑顔を見せる。
 そんな素敵な笑顔の状態でクレモトは気絶してるオルカをミルエが倒したダイダロスの中にポイッと投げ捨てた後、ポチに振り返ってこう言った。

「ポチ君、火葬宜しく」

 猫の皮を被った鬼がここにいました。
 容赦が無さすぎる非道の言葉を聞き、急いで止めようとちると絵龍が口を開くも時既に遅し。
 ポチはクレモトに頷き、オルカとダイダロス目掛けて口から火を吹いた。
 もちろん炎は燃え移り、ぼうぼうと彼等を飲み込んでいく。嫌な臭いが辺りに広がっていく。
 あまりにとんでもない光景に絵龍が悲鳴に似た叫びをあげ、ちるが目を背ける。

「あああああああ!!?」
「こ、これはあまりに酷い……!」

 多分二人とも死者が焼かれていく様子じゃなくて、容赦なさ過ぎるクレモトの作戦決行の方が見ててダメージでかいんだと思う。ツギ・まちなんてオルカの方向いて合掌してる始末だし。
 その時ディミヌが漸く気づき、一同に大声で怒鳴りつけた。

『こらーーー! オルさん、燃やすなーーー!!』
「ポチ君、威力アップ」
「はいはーい」
『ってそこで強火にしないでよ!?』

 どう見ても外道です、ありがとうございました。
 ディミヌは口で言っても止まらないと判断したのか、触手のような耳を薄ら輝かせる。
 すると何かしらのプログラムが動いたのか、燃やされてる真っ最中だったオルカの姿がこの場から消されてしまう。
 ディミヌを映していたモニターも同時に消えてしまい、残るのは燃えていく元ダイダロス達と一同だけだった。

 ■ □ ■

 下にぽつりぽつりと見える人影はかつて人であった死霊。
 死霊達は死体に群がり喰らっていくか、生き残った者を求めて彷徨っている。
 物語の中でしか見ないと思っていた光景にウェザーは口を抑えながら、否定の魔女の作戦について理解する。

「……これが、モーガンの作戦」
「うん。とれさま、だいたん、だいすき」
「大胆すぎるだろ、これは」

 ホロの説明を聞き、ウェザーは青ざめた顔で指摘する。
 今二人がいるのは高層ビルの屋上だ。
 緊急放送が入ったと同時に、ディミヌが事前に仕込んでおいた転送プログラムを使ってホロとウェザーはここに避難してきたのだ。
 この二人の担当は今現在ではハンターに対しての救援要請・臨時連絡・治療活動という一言でいっちゃえば「裏方」である為、戦闘が行われる可能性が限りなく低い場所で待機している。
 ウェザーは最初反論したものの、戦闘能力の問題とトレヴィーニが直々に作戦に使うという事を聞いて渋々聞いている。
 始まって数十分ぐらい経っている現在、まだ負傷者は出ておらずのんびりしているところ。
 本当にどうにかなるのかとウェザーが屋上の中心に歩いていきながら思う。そんな時。

『ホロくーーーん! 大急ぎで回復回復回復回復!!』

 突如ホロとウェザーの眼前にディミヌの映ったモニターが出現し、耳元で叫ぶ。
 同時にウェザーの目の前にドサッと真っ黒焦げのカービィが落ちてきた。しかも一瞬目が合った気がした。
 いきなりの出来事に尻餅をつき、さっきよりも顔青くしながら後ずさりするウェザー。

「うわわわっ! ちょ、焼死体!?」
『似て非なるものです! オルさんが、オルさんが~!!』
「おるか、やられた!?」

 ディミヌの泣き出しそうな顔と言葉を聞き、ホロは慌てて真っ黒焦げのカービィ……オルカのもとに駆け寄ると支給されていたマキシマムトマトを強引に口の中につっこんだ。
 「え? 治療法、それ?」とウェザーが思ったけど、ホロはぐいぐいとマキシマムトマトをオルカの口に押し込んでいる。
 もともとの再生能力も重なり、見る見るうちにオルカの傷は回復していってあっという間に全治した。押し込んでも食べた事になるようだ。
 全治したオルカの全身を見て、ウェザーは驚き思わず声を上げる。

「って……指名手配犯んんんん!!!??」
「うるさい」

 ホロ、ちょっと顔しかめる。けど大して気にせず、ディミヌの話を聞く。

『馬鹿殿がダイダロス使ってトラックぶつけてきたんですよ! 例のナグサ君と一緒に!!』
「ナグサ!?」
『はいですー! ナグサ君、オルカさんとやりあってたから大怪我負っててそれに追い討ちが。運高いから大丈夫だろうって馬鹿殿言ってたけど、嘘だー!!』
「つまり瀕死の重体……ってこと?」
『そうそう!! それに馬鹿殿のいる病院にミルエがダッシュで向かっている真っ最中だから、これからトラブルありそうだし……。ここでナグサ君死んだら、トレ様がキレ様になっちゃいます~!!』

 話を聞いていたウェザーはディミヌの説明を聞き、頭が真っ白になりそうだった。
 こんなにも、こんなにも早くナグサが倒れるなんて。ここまで来たと言うのに、会う事も無く? 自分の思いをぶつける事も無く? 己の恨みはもう晴らせないのか?
 眩暈がした。体がふらつく。
 ディミヌがふらつくウェザーを見て心配そうな顔をする中、ホロは二人を交互に見る。

「でも、ちゃんす」
「え?」
『チャンス……って、まさかホロ君!?』

 意図がつかめないウェザー。それに対し、ディミヌは察したのか驚きを隠せない声でホロを凝視する。
 ホロはこくんと頷くと、簡潔にこう言った。

「うぇざー、でばん、きた」

 そう話すホロの顔は無表情で、何を考えているのかつかめなかった。



 次回『The オリカビ Survivor』







「ノアメルトはね、トレヴィーニの味方じゃないの。敵でもないの」
「ただ自己満足に動く魔女。己の欲望に従い、動き続けるだけ」
「ノアメルトは存在自体がイレギュラー。だから不揃の魔女と呼ばれているの」
「だからノアメルトは勝手に動くつもり。」

否定の魔女トレヴィーニ・フリーア・フェイルモーガン:ラスボス
空刃の魔女フル・ホルダー:連絡係①接近戦と空中戦が特異。
混沌の炎モザイク卿:強敵ボス。オールマイティに戦闘可能。
電子の乱姫ディミヌ・エンド:連絡係②電子戦ならば負けません。
歪んだ死者ダイダロス:雑魚敵軍団。数は無駄に多い。キングは頭脳が発達しているけど、体術は微妙。
戦闘狂オルカ:強敵ボス。まず地上では勝てるものはいない。リーチが長く、攻撃するのが難しい。
トランプ使いジョーカー:強敵ボス。トランプを使った魔法が得意。
生を願う哀れな女クウィンス:別名ホークアイ。遠距離からの射撃が得意。
裏切り者ベールベェラ:暗黒使い。しかし現在は囚われの身。ソラを誘き出す為の。
(以下出せれたらの連中)
人食いレヴィ:オルカが連れてきた人物。凶暴すぎます。
捕食者こあめ:オルカが連れてきた人物。
不揃の魔女ノアメルト・ロスティア・アルカンシエル:???

  • 最終更新:2014-05-28 00:10:13