第二十七話「空中大激戦」
ポチがスーパーマーケットを全壊させるぐらいの巨大ドラゴンになった。
ギリギリで避難出来た北エリア一同はとんでもない光景に唖然としていた。
「な、ななななななななな何じゃこりゃああああ!!!!」←絵龍
「ちょ、そんなのデータにも無いっちゅーの!!」←ログウ
「いくらカービィが何でもありとはいえど、ここまで大胆な変化あったっけ……?」←アクス
「約一名前例がいるけど、それとは違うと思う」←フー
「……それ、僕のことですか?」←セツ
驚きの声を上げる者、呆然とする者、冷静なままの者などなどと多種多様である。
ナグサは目を手でごしごしこすり、何度もポチドラゴンを凝視する。でも目の前の光景は変わらず。
「異常だ。異常すぎる。こんなのありえるのか」
「目の前にあるからありえるよ」
「~!」
「でもマナ氏から聞いた話じゃ、こんな感じで変身するカービィなんていないに等しいって……」
「「「……」」」
ミルエの正論にツギ・まちが頷く中、ツギ・まちの頭部にいるちるは昔の事を思い出しながら呟く。
三人はそんなちるを見て、激戦だった人形屋敷戦の事を思い出して「説得力が無さ過ぎる」と一斉に思ったのであった。
ソラは軽快にポチドラゴンの各部をジャンプし、頭部に到着すると一同に向かって叫ぶ。
「話している暇は無い。早くポチに乗れ!」
ポチドラゴンも姿勢を低くし、一同が乗り込みやすい状態にする。
遠目に見えるダイダロスの軍隊(ナインライトブレイカーの巻き添えを食らわないよう、かなり遠くまで逃げ出していたようだ)が進行を再開している為、一同は大慌てで乗り込んだ。
全員が乗ったのをソラが確認するとポチドラゴンに飛ぶ事を許可する。するとポチドラゴンは大きな翼を羽ばたかせ、その巨体を夜空へと浮かびあげるとそのまま南へと飛んでいく。
風圧が激しく、必死につかまる一同。数名かは魔力を使ってその場に己を固定している。
直後、道なりに続く高層建物の屋上から複数の岩石が飛んできた。
飛んできた岩石に対し、一同は驚くものの遠距離攻撃ができる者達は己の能力と魔力を発動させて岩石が直撃する前に破壊する。ポチドラゴンの顔面へと右から飛んできた岩石をソラが先ほどのキューピッド同様切り刻み、塵へと変える。
それぞれ岩石が飛んできた方向に顔を向けると建物の屋上で簡易的な巨大大砲に岩石を詰め込もうとしているダイダロスの姿が見えた。一つや二つじゃなく、結構ある。
まさしく合戦最中とでもいうべきその様子を見て、絵龍が顔を引きつらせながら呟く。
「……世界大戦終わったんじゃなかったっすかね?」
「今この空間は戦争真っ最中だよ」
クレモトの的確すぎる答えを聞き、絵龍は思わず納得してしまった。
岩石を砲台に詰め込むのには手間がかかっているのか、第二砲撃は来ない。
代わりに空襲部隊であった量産型キューピッドの集団が飛行するポチドラゴンをすばやく囲み、その動きを止める。
否応なく止められたポチドラゴンに対し、四方八方から一斉に矢を発射する。
咄嗟にセラピムが右半分を、フー達が左半分を防御魔法を使ってポチドラゴンに矢が直撃するのをギリギリで防ぐ。
術者達の労力が減っている為か、攻撃を防ぎ終わった途端に魔法は解ける。
解けた瞬間を狙い、ナグサはすっぴんに戻ってアイスの宿っている星をキューピッド目掛けて吐き出し、セツは複数の氷柱を出し、絵龍はボムを投げ、マリネはハンマーを投げ、ちるは衝撃波を放ち、一気に量産型キューピッドの軍団を攻撃する。
だが改良型と違って攻撃を喰らっただけでへこみ、何体かが墜落するもののほとんどがその場に止まったままだ。
それをチャンスと見た量産型キューピッドの軍団が再度矢を大量発射し、ナグサ達も遠距離攻撃できる者が矢を相殺したり、キューピッドを墜落したりするなどと奮戦する。
けれども矢を全て防ぎきれる筈が無くポチドラゴンの体にも幾つかが刺さってしまい、ポチドラゴンは悲鳴を上げる。
その悲鳴を聞いてソラが無事かと尋ねると、ポチドラゴンは無数の痛みに堪えながらも頷く。
その時、ポチドラゴンの左真横に位置していた量産型キューピッドの一体が突如として下から真っ二つに切られた。
何だ何だと一同が驚いている間に真っ二つに切られた一体から広がるようにどんどんと量産型キューピッドが倒されていく。
その合間合間に見える紫色の物体の姿かたちを見て、セラピムは驚きのあまり声を上げた。
「アカービィ君!?」
名前を呼ばれた紫色の物体ことアカービィは一同の方に振り向いた。
だがその姿は先ほどのものとは違い、角が生えた禍々しい紫の翼が生えた帽子を被っていて、その顔とにじみ出る雰囲気がも悪魔を連想させるものへと変わっていた。
その姿を見て、絵龍とログウが思わず声を上げた。
「アカービィ副隊長ならぬクロービィ副隊長降臨ー!?」
「いや、アレは寧ろムラサキービィ副隊長だ!!」
アカービィは「ムラサキービィ」という称号を手に入れた!
だが当の本人はそんな称号を得られたというのに、ツッコミを入れる事無く残っている量産型キューピッドの撃滅を再開させる。
その一方で唐突にフーの足元に黄色の三角形型魔法陣が展開される。フーはクスリと妖しく笑いながら、こう言った。
「それじゃ、みんなお待ちかねのお仕置きタイムだよ」
同時に黄色の三角形魔法陣が一気に輝くと共に、次々と量産型キューピッドの軍団目掛けて無数の雷が落ちていく。
威力も範囲も大きく、雷を喰らったキューピッドの軍団は黒焦げになって次々に落ちていく。それだけでなく建物の屋上で砲撃準備を漸く整えた巨大大砲も、今放たれた雷によって一つ残らず破壊されている。雷を逃れた数少ない量産型キューピッドは、雷を全て避けきったアカービィと遠距離攻撃可能組によって撃墜されていく。
あっという間に量産型キューピッドの軍団は全滅し、奮戦したアカービィも乗り込んだのを確認してからポチドラゴンは再び南に向かう。
アカービィの帽子から太陽を連想させる突起を生やした一つ目の物体が分離し、大剣へと入り込む。するとアカービィの姿を本来のものへと戻っていった。
「あ、アカービィ副隊長……今のは?」
「変異ダークマターのシャインで、俺の相棒。それよりもさっき……」
「新手が来たぞ!! それもかなりの大物だ!!」
アカービィがセラピムに尋ねようとした矢先、ソラが大声を上げた。
一同がその声を聞き、ソラが振り向いた西に目を向ける。
西からは蛇に似た体格の水色の東洋龍と十数の星が飛んできていた。星の三つには人が乗っているのがどうにか確認できた。
水色の鱗に包まれた中で唯一夕暮れ色の瞳が強く輝いており、花弁のような七枚の羽が水色の龍を余計に彩らせていた。
ポチドラゴンと同じかそれよりも身長は大きいといったところか。それでもカービィと比べたらずっと大きく、戦闘するとしても相当苦戦を強いられるだろう。
だがアカービィとセラピムの両名は水色の龍の正体に気づき、その名を叫んだ。
「「コーダ隊長!」」
『はいぃぃぃぃぃぃ!!!!???』
その名を聞いた大半が思わず声を上げた。アカービィとセラピム、声を上げなかった者達はその煩さに耳をふさぐ。
コーダと呼ばれた水色の龍はポチドラゴンの横まで移動し、その場で停止する。その背中には西エリアにいるタービィ達がいる。
ポチドラゴンとコーダドラゴンの左右に均等に十数の星――量産型エアライドマシンが並ぶ。その内、ポチドラゴン側の三つにはラルゴ、カタストロ、フズがそれぞれ乗っていた。
この悪夢都市で生き残った者達が本当の意味で合流し、一同は沸きあがる。これで全員脱出ができるし、話し合った豪鉄曰く「カーベルの口に入っちゃう」あの作戦も可能となった。
「エアライドマシンが十個ほどある。戦闘できるやつはこっちに搭乗してくれ」
「あいあいさーっ!」
ラルゴに言われ、ポチドラゴン側ではまずミルエが飛び乗る。続けてナグサ、フー、クレモト、絵龍、ケイト、マリネが乗り込む。コーダドラゴン側はタービィ、ローレン、ソプラノの三名が乗り込む。
ラルゴはハイドラパーツを豪鉄に手渡した後、先頭に出る。
同時に一同の目の前にスピーカーを抱えたキューピッドが立ちはだかる。
キューピッドの出現に戦闘組が一斉に警戒し、ドラゴンに乗っている結界担当のセラピムとシャラがそれぞれ発動準備態勢に入る。
キューピッドは動かず、スピーカーを一同に向けるだけ。スピーカーから男のふざけた声が響いてくる。
『生き残りの皆様、はじめましてこんばんは! 俺は部下に恵まれまくっているキング・ダイダロスだよ~ん』
大国関係者はユニコスの声に驚きを覚えるものの、すぐにキング・ダイダロスがユニコスの体を乗っ取っているのを思い出す。
夜明国崩壊事件の生き残りであるチャ=ワン、タービィ、ケイトがキング・ダイダロスの言葉を聞いただけでかつての怒りを蘇らせる。
「貴様の名を聞くだけで耳が腐る……! 失せろ、この外道が!!」
「何をふざけた口聞いてるんだテメェは!? 用が無いなら声すら聞かせるんじゃねぇ!!」
「死人を勝手に動かして部下にしているだけだろ? それを部下に恵まれているなんて言わないでほしいんだけど!!」
三人の怒りの叫びに対し、スピーカーから驚きの声が上がる。どうやら向こう側にも音声は届くようだ。
『うおおおお!? おいおい、ここまで怒鳴るか普通? そんなに俺、悪役ぅ? まっ、普通そうだよな。俺ってちょ~悪役だよな~。おぉ、結構かっこいいかも?』
「うわっ、開き直ってナルシーになりやがった……」
『はいそこのフォックスガール。お前は俺のどこが正義っていえるんだ? いえるっていうんなら、五十文字以内で説明するように』
「えぇぇ!? そこでうちに絡む!?」
「シアンちゃん、無理して答えなくていいよ。……私の父さんを殺した奴が正義の筈が無いから」
絡まれてしまい、困惑するシアンを宥めながらシャラはスピーカーを睨み付ける。
その声を聞いたキング・ダイダロスは何かを察したのか、スピーカーから唐突にこんな話を始めた。
『父さん、ねぇ。お前の耳、どっかで見覚えあると思ったら九年前に遊んでやったおっさんだわ。そのおっさん、似合わん耳生えててすっげー反抗的だったの覚えてるぜ? 何言ってたのかは忘れたけどね。けどよ、似合わん耳と反抗的な目が気に喰わなかったらそこだけ解体させてから喰った覚えはあるぜぇ? あん時は楽しかったぜぇ。耳を少しずつ切り落としてやったらよ、血がどばどばどばどば出る出る出る! 目玉一個とっただけででっかい悲鳴あげちまったし、もうみんなで大爆笑! いやぁ、見ていて爽快だったわ。あれは!! 最後に叫んだのは王国万歳じゃなくて女二人の名前だったから更に爆笑爆笑。おかーちゃんの名前でも叫んでたんかね? まっ、今となっちゃ過去の話だけどよぉ!! あぁ、そういやかたっぽシャラって名前だったけぇぇぇ?』
シャラはその話を聞いて、知ってしまい、そして強い強い怒りが出現した。
夜明国崩壊事件にて父は死んだのは知っている。だがどうやって死んだのかは知らなかった。
だが、たった今夜明国崩壊事件の首謀者であるキング・ダイダロス当人が殺したと言った。耳と目を解体して喰らったという残虐な殺し方を言った!
ハープを握る手が強まる。先ほどシアンを宥めていた様子から一転し、怒りが彼女を支配する。
それでもキング・ダイダロスはあざ笑うかのように話題を変える。
『あ、そうそう。悪役アピールついでに言っちゃうわ。若葉のボウヤ、えーとウェザーって子ね。そいつ殺すのは当初から決定していたんだけどよ、あの女に殺させるっちゅーのは俺のアイディア。いやぁ、素敵でしょ? 一番助けたかった恩師によって始末されちゃうっていう展開はよぉ! あまりの悲劇に涙した人も多いんじゃないのかな? かな? もう涙で目の前が見えない、こんな悲しい展開はないわ。って感じでよ~!! ちょっとでも泣いちゃった人がいたら俺の勝ち! はーはっはっはっは!!』
その言葉を聞き、ナグサとセツは驚愕する。
ウェザーの死は最初から決定していた? しかも殺させたのはクウィンス? そんな展開を、ただ単にお涙頂戴劇のように言う……!?
他人事のように笑い続けるキング・ダイダロスに対し、ナグサが今まで誰も聞いたことが無い怒りの叫びをあげた。
「この外道があああああああ!!!!」
その言葉は、皆の思いと重なっていた。
夜明国とサザンクロスタウンの両方を滅ぼし、無数の命を死霊へと変えても尚、この魔王は笑い転げている。面白くてたまらないといった様子で笑っている。
外道と罵られたキング・ダイダロスは全く怯む様子が無く、意気揚々と返す。
『外道で結構! 俺は命をむちゃくちゃにするのが大好きな大魔王! 俺の悪魔ミルエ・コンスピリトを滅ぼす為なら全て滅ぼしにかかる復讐鬼!! そしてそのトレヴィーニ一派で一番の頭脳派!! ってなわけで打ち合わせ通り、よろぴく☆』
直後、一同の上空に巨大な暗黒の穴――ブラックホールが出現する。
ポチドラゴンとコーダドラゴンを飲み込めてしまいそうなぐらい巨大且つ闇に満ちていて、中に何があるのか予測もできない。
ただ分かるのはキング・ダイダロスに集中しすぎ、ここまで巨大な能力発動に気づけなかった事。
最初からこのつもりだったのかと察しが良いメンバーが気づく中、キング・ダイダロスは気持ち悪く声を高くして暗黒発動者に向かって叫んだ。
『さぁ、ベールベェラちゅゎ~ん! バキュームよっろし~く~!!』
巨大ブラックホールが凄まじい勢いで吸引を始める。
ドラゴンに乗っている者達は必死につかまるものの、全てのエアライドマシンはあっさりと飲み込まれている。当然エアライドマシンに搭乗していた者達は全てだ。
それでも巨大ブラックホールは吸引をやめず、どうにかして逃れようとしてたポチドラゴンとコーダドラゴンさえも負けてしまい、その中へと飲み込まれていく。
巨大ブラックホールの中は全てが漆黒の闇。何も見えない闇。
個人個人を見えぬ触手が包み込み、闇の更なる奥へと引きずり込んでいく。
誰がどこにいるのか、一体何をされるのか分からない中、ソラは一瞬だけれどもその存在を見る事ができた。
闇の中、ただ一人触手に捕まらず、力を解放させている女性の姿を。
先端が青色の杖を上に向け、オレンジのマントがついた帽子を被った紫の女の姿を。
希望の勇者にとって、架空の勇者にとって、もっとも救いたい女性ベールベェラの姿を。
「ベェラアアアアアアアアアアアアア!!!!」
ソラは虹色の剣を使って、己を締め付けていた触手を切り刻むとベールベェラのところまで飛んでいく。
名を呼ばれたベールベェラはソラに振り向き、形だけの笑顔を浮かべる。
「そら」
ベールベェラの背中から漆黒の触手が無数に出現し、ソラを捕縛すると己ごと包み込んだ。
その瞬間を目撃する事が出来たのは、黄金の突風と虹色の何かであった。
黄金の突風は三つの触手を切り刻み、その中に入っていた三人を中に入れるとそのまま消える。
虹色の何かは突風以上の素早さで複数の触手を力任せに破壊していき、捕まっていた者達を救出すると短い手足と魔法を駆使して全員抱え、そのまま何処に消えた。
■ □ ■
豪鉄が目を覚ますとそこは滑走路だった。
いきなりの場所転換にわけが分からず、辺りを見渡す。
サザンクロスタウンの飛行機はちゃんとある。滑走路もほとんど異常なし。後ろを振り向いたら、禍々しい魔女の城があるのでこれは異常あり。
しかもこの場で倒れているのは元に戻ったコーダとナース、それと白いシルクハットを被った白色のカービィ型ロボットと民族的な青い帽子を被った少年だ。圧倒的に数が足りない。
何でこうなってるんだ、と豪鉄が事態に追いつけず混乱していると唐突に背後から話しかけられた。
「気がついたみたいだね」
「うわ!?」
豪鉄は思わず声を上げ、振り返る。ものすごく至近距離に美幼女の顔があった。
驚きのあまり変な声をあげながら、豪鉄は美幼女から慌てて距離をとる。距離をとる時、足をもつれさせてしまい、しりもちついちゃった。
さっき後ろを見た時はいなかった筈だろ、この子。何時の間に現れたんだ? それに某妹様を連想してしまいそうな羽を持っているのは自分の気のせいだろうか。
もう混乱しまくりの豪鉄に美幼女はくすくす笑う。
「驚きすぎだよ。みーんな起こしてくれた事には感謝するけどね」
豪鉄はそれを聞き、倒れていた四人に顔を向ける。
四人共に豪鉄の変な声で起きたらしく、それぞれ立ち上がって困惑しながらも美幼女を見る。
「君は……何者ですか?」
コーダが筆を手に取り、何時でも戦える状態で美幼女を強く警戒しながら睨み付ける。
そうするのも状況が状況というのもあるが、この美幼女自身が異様過ぎるのだ。
虹のような装飾を持つ七つの水晶がついた輪とガラスのように薄く滑らかな特異な羽。死人そのものといっても過言ではない生気が無さ過ぎる青白い肌。瞬きしている間に色が変わっている不気味な瞳。そして彼女から溢れんばかりに出てくる否定の魔女トレヴィーニと同等の魔力の大きさと強さ。
言葉で表すならば「不揃」が何よりもふさわしかった。まぁ、それもその筈だ。
「ノアは不揃の魔女ノアメルト・ロスティア・アルカンシエル! この物語が最高の形で終わる事を望んでいる者だよ!」
彼女は不揃を司る事象の魔女ノアメルト・ロスティア・アルカンシエルなのだから。
己等の前に出現したノアメルトに対し、一同は驚きが隠せなかった。
「不揃の魔女?!」
「ちょ、それマジで!?」
「……否定の魔女の仲間ってこと、つまり?」
「ううん、違うよ? ノアメルトは魔女だけど中立にいるの。さっき言ったじゃん、物語が最高の形で終わるのを望んでるって」
「……なら目的について話してはくれませんか? 私達の前に現れた理由を。先ほど言った物語を終わらせる為なんて答えないでくださいよ」
ナースの質問を否定するノアメルトにコーダが再度尋ねる。ノアメルトは幼女らしい無邪気な笑顔を浮かべてこう答えた。
「物語がこんな中間地点で終わるのはつまらないから! だから脱出の為にちょーっと力を貸してあげようと思ったの!」
「そんじゃ全員こっちに持ってきてください!」
「却下! それじゃ物語としてつまらない。ノアメルトはあくまでも物語を素敵な形にする為、誘導したり手助けしたりするだけ」
ログウのお願いに即答し、ノアメルトは理由を話しながら翼を羽ばたかせて一番近くにある飛行機の羽に座り込み、五人を見下しながら言う。
「さぁ、あなた達はあなた達のやるべき事をやりなさい。私はさまざまな場所を眺めているから」
先ほどとは一変し、他者を見下す女王のような口調だ。見た目は幼女のままだというのに口調が変わっただけでガラリと全てが変わった気がする。
ノアメルトは己の周囲に小さな七つのモニターを浮かび上がらせ、それを眺める事に専念する。
本当に「不揃」の魔女だとコーダは思いながらも、彼女が与えたチャンスを無駄にしない為に四人に振り向く。
「準備を行いましょう。脱出の為の」
その言葉に、四人は頷いた。
これより悪夢都市から脱出する為のとんでもない作戦を行う事になる。
次回「Boss Battle」
- 最終更新:2014-05-28 00:15:12