第三十話「舞い降りた天使」


 不揃の魔女は戦いを終えた五つのモニターを消し、残った三つのモニターに集中する。
 己が座り込む飛行機の羽の下では別の飛行機に集まった生存者達が脱出の準備を行っている真っ最中だ。ドラグーンパーツとハイドラパーツがある為、ノアメルトが加担しなくてもギリギリどうにかなる。
 否定の魔女トレヴィーニの手によってダム・K&ミラリム救助隊はこの城に突入する事は不可能。その為、未だ城の中に展開された幻想空間内部で戦っている者達を黙って待つ事しかできない。
 今、戻ってきていないのはナグサ、ミルエ、ツギ・まち、アカービィ、セラピム、ポチ、ソラの七名。
 トレヴィーニとその部下二名がそれぞれ相手を担当しているところだ。といってもトレヴィーニ組を映したモニターには砂嵐が入っており、観測する事が出来ない。
 手を出すな。
 ノアメルトにはトレヴィーニがそう言いたいのだと勝手に解釈し、残った二つのモニターを眺める。
 一つは炎と炎の見ているだけでこっちも暑くなる戦い。
 一つは光と暗黒がぶつかり合い、意味も無く叫びあう戦い。
 片方はともかく、もう片方は見ていて面白い。あまりにも酷すぎる運命に抗おうとする彼の姿が、滑稽すぎて。
 光がどのような行動を起こすのか気になったノアメルトが炎同士が戦うモニターと砂嵐しか映さないモニターを消そうとしたその時、ハッと顔を上げる。

「……おそいよ」

 その顔は笑っていた。まるで欲しいゲームを買えた子供のように、笑っていた。
 ノアメルトは気づかれない程度に小さく小さく片手を振る。すると己の正面に新たなモニターが出現する。
 モニターに映るのは己が目覚めさせた天空都市から舞い降り、否定の結界を打ち破って魔女の城へと乗り込もうとしている戦士の姿。
 それはトレヴィーニにとって過去の思い出であり、ノアメルトにとって己が出せる限りの手駒。

「このまま戦いが全部終わっちゃうって思ってたから、ノア安心したよ」

 中立とはいえど、トレヴィーニだけが動かしているのを眺めているのではつまらない。
 双方に味方することも敵対することも出来ないけれど、双方以外の何かをけしかける事は出来る。
 だからノアメルトは己の暇つぶしの為にスカイピアを目覚めさせた。トレヴィーニの過去の傷跡を目覚めさせた。
 過去の遺産、黒歴史と読んでもおかしくない空中王国の出現にオリジナル・カービィ大帝国の者達と否定の魔女はどのように対抗するのか、どのように傷つくのか、どのように悲鳴をあげるのか。
 イトが絡み合えば絡み合う程、人々はより一層醜く美しくなる。
 魔女が退屈を凌ぐ為に望むのは戦争と人々。複雑に絡み合え、魔女に退屈を思わせるな。

「『NegativeWhich』という物語を、面白くしてよ」

 更なる引き金となる戦天使を眺めながら、ノアメルトは笑う。

「ノアメルト・ロスティア・アルカンシエルを楽しませてよ」

 物語の完成を望みながらも、物語をひっかきまわす矛盾の化身である不揃の魔女はありえないぐらい無邪気に笑う。

 ■ □ ■

 ごうごうと足場の下で炎が燃える。火の泡が弾ける。セラピムの頬から汗が落ちる。
 そりゃそうだ。たった一つだけの足場である大きな丸い円盤の下は、マグマとなっているのだから。
 火山の火口を連想してしまいそうなぐらい、マグマがあわ立っている。燃えている。獲物を求めて燃えている。
 落ちたら確実に自分の命は燃え尽きる。セラピムはごくりと息を飲む。

「補佐官!!」

 その時、アカービィが叫んだ。
 セラピムは咄嗟に虹霓を使って魔法陣を描き、強い強い突風を己の前で戦闘しているアカービィとモザイク目掛けて起こす。
 アカービィは己に直撃する寸前で真下に滑空して避け、モザイクは突風を正面から食らってしまってその体をバラバラにしてしまう。
 しかしすぐに炎は集結し、形はアカービィと同じ状態で復活したモザイクはその手にアカービィのものと全く同じ大きさと姿形をした炎の剣を生み出し、セラピム目掛けて突撃する。
 セラピムは急いで魔法陣を正面に描き、突撃をはじき返す。
 モザイクは弾き返されるもののすぐに体制を整える。その隙にアカービィが背後に回り、大剣で切りかかる。
 咄嗟に己も大剣で防ぐモザイク。
 アカービィとモザイクは互いの大剣で押し合う。
 セラピムは呪文を唱え、アカービィの補助を行う。しかし彼女の体力はこの幻想空間にいるだけで削られていっていた。

(アカービィ君とモザイク卿は炎との融合型だから大丈夫とはいえど、このままじゃ一番に私が倒れる……!)

 モザイクが生み出した幻想空間だから、マグマの真上というシンプルなステージ。恐らく常人ならば落ちただけでジ・エンドだろう。
 だがここにいるのはアカービィとセラピムとモザイクの三名のみ。
 アカービィとモザイクは元々炎である為、このステージは相性が合う為にそれ程ダメージにはならないもののセラピムは絵描き型に分類されるので体力が非情に削られていくのだ。
 気温も熱も高く、汗が尽きる事無く頬を流れていく。
 だから反応に遅れてしまった。
 モザイクが炎の蛇となり、アカービィの横を素早い動きでかいくぐっていってセラピム目掛けて突撃してきた事に。
 セラピムは驚き、急いで魔法陣を描くものの間に合わずモザイクはすぐそこまで迫っていた。
 簡単な防御魔法を咄嗟に発動させるものの直撃は免れない――!
 来るべき衝撃に対し、セラピムは思わず両目をつぶってしまう。
 次の瞬間、己の正面から何かと何かがぶつかり合い、弾かれる音が耳に入ってきた。
 何が起きたんだと思い、セラピムは両目を開ける。
 そこには炎の蛇と化したモザイクを巨大な赤い刃の鎌で防ぎ、押し返す男の背中があった。
 漆黒の翼を生やし、「呪」と描かれた紙を二対つけた輪を頭につけた灰色の男。

「だ、誰……?」

 予想外且つ見たことも無い乱入者にセラピムは思わず呟く。
 しかし聞こえていないらしく、男は押し返したモザイクに鎌を向けながら静かに口を開く。

「まとまりを持たぬ穢れた炎よ。偽の翼を羽ばたかせ、神の使いたる天使に傷を与えるなど愚の骨頂。その罪の深さ、理解していての悪行か?」

 押し返されたモザイクはある程度距離をとり、元の形に戻りながら男を見る。
 正面から見たその男には無数の傷跡があった。両目にはそれぞれ一つずつあり、両足には数え切れないほどある。右手なんか完全に手の甲が傷跡だけで見ているだけで痛々しい。
 それでも赤黒い瞳はそんな事を感じさせないぐらいの鋭さを持ち、モザイクを射殺さんばかりの勢いだ。

『スカイピアの天使か。閣下から聞いてはいたものの、本当に舞い降りてくるとは……』

 不揃の魔女ノアメルトの手でスカイピアが復活したというのは聞いていたものの、まさかこんなにも早く目にすることになるとは。
 アカービィは帽子の翼を羽ばたかせ、モザイクの横に並ぶと天使を睨みつけながら問いかける。

「何者だ。どうしてこの場に入ってきた?」

 モザイクの問いかけに対し、天使は鎌を消すと礼儀正しく頭を下げる。すぐに顔を上げて己の名を堂々と名乗る。

「はじめまして、俺はジス」

 漆黒の翼を広げ、己の前に浮かぶ二つの炎を鋭く睨みつけながらも、その口調は冷静且つ淡々とした様子で己が何者なのか、自己紹介していく。

「天空王国スカイピアより舞い降りた偉大なる天使兵団から選ばれたる『神の為の剣<エデル>』の長にして、スカイピアに歯向かう大地にひれ伏すしかできない翼無き愚者どもを断罪する死神」

 威風堂々と何者にも恐れないかのように答えるその姿は漆黒の天使、血塗れた死神、誇り高き戦士、全てが重なって見えるほど偉大で凛々しい。
 スカイピアより舞い降りた漆黒の天使ジスはその翼でセラピムをかばうように立ちながら、周囲に複数の魔法陣を展開させながら氷のように冷たく鋭い瞳を二つの炎に向ける。

「偽りの翼を持つ炎の絞りかすよ。燃やす事しか出来ないお前等に我が同胞を傷つけられるというのならば、それよりも早くお前等をこの手で滅ぼしてやろう。『神の為の剣』の主である俺によって殺される事だけでも誇りに思うがいい」

 あぁ、どういうことなのだろうか。
 全身に痛々しい傷跡を負っているというのに、純白とは正反対の翼を持っているというのに、他者への殺意を隠す事無く見せ付けているというのに。
 その姿が神に仕える者に相応しい≪天使≫と思えるのは。

 ■ □ ■

 燃え盛る火口の真上、漆黒の天使は翼を広げて見ず知らずの翼を持つ乙女を天使と認識して守ろうとする。
 その為に己の目の前に存在する滅びの炎である存在達を潰そうと己の周囲に同時展開させていた複数の魔法陣に手も触れず、口も開かずに、一斉に魔法を発動させる。
 魔法陣と同等の太さを持つ光の龍が一斉に出現し、モザイクとアカービィ目掛けて突撃していく。
 モザイクはその身を分散させ、無数の小さな火の玉になると光の龍の複数突進を避けると光の龍に纏わりついていってエネルギーを吸収していく。
 アカービィは大剣を持って回転し、己の身を炎で包ませて襲い掛かってくる光の龍を粉砕する。
 光の龍が全滅すると同時にジスとセラピムの周囲に浮かんだ魔法陣は再び光り出し、またも光の龍を一斉に出現させて突撃させる。
 連続攻撃に対し、モザイクは聞き取れない速さで詠唱を唱える。すると幻想空間から光の龍と同じ数だけの細い火柱が一斉に立ち、それぞれが自我を得たかのように光の龍へと襲い掛かる。
 光の龍と火柱同士がぶつかり合い、攻撃の余波が当たりそうになるもののアカービィは間をかいくぐっていってジスの前まで接近すると大剣を振り下ろす。
 しかし大剣は突如出現した防御魔法陣によって防がれ、弾かれてしまう。
 アカービィは弾かれた衝撃で少し後方に引くものの、すぐに体制を整えてジスに叫ぶ。

「ジスって言ったな。目的は何だ!」
「知れたこと。天使が同属を見つけたならば保護するだけのこと」
「保護、だと?」
「そうだ。八百年もの歳月を寝過ごしてしまったもののやる事は変わらない。滅びの魔女インヴェルトも同じように目覚めている以上、俺達に時間は無いからな」

 そこでジスは言葉を区切る。
 直後、大剣を防いだ防御魔法陣が勢い良く回転を始めながら巨大な刃を生やした円盤へと変化し、すぐそこにいるアカービィ目掛けて突撃する。
 アカービィは咄嗟に大剣を前に出して盾にし、巨大円盤を防ぐ。しかし巨大円盤は刃を出したまま勢い良く回転し続け、確実にアカービィを傷つけようと追い込んでいる。

「アカービィ副隊長!!」

 セラピムが身を乗り出して助けようと飛んでいこうとするけれども、ジスに翼を広げられて遮られてしまう。

「彼奴は偽りの翼を持つ愚劣な民。気高き天使が構う価値がある者ではない」
「アカービィ副隊長は私の味方です! 敵は混沌の炎モザイク卿、一人だけ。私に味方するというのならば、アカービィ副隊長を……!」
「いい加減にしろ」

 振り返ったジスに睨みつけられ、セラピムは言葉を失ってしまう。
 その瞳は氷よりもずっとずっととても冷たく鋭く、見つめ合っているだけでも心を締め付けられてくる。傷つけられてくる。息が出来なくなってくる。
 初めてモザイクと遭遇した時も恐ろしかったけれども、今は己の心がジスと同じものにされそうで頭が真っ白になっていく。

「八百年の歳月が流れていようとも、お前はれっきとした天使。スカイピアに住まうべき天使。地上の穢れを受けずに純白の天空ゆえの美しさを背負える唯一の存在である天使。そして彼奴は偽りの翼を持っているだけで天使ではない。穢れを持つ愚劣な地上に這い蹲る事しか出来ない民と同じ。そのような奴に、生きる価値など存在しない」

 それが――八百年前、世界を支配しようとしたスカイピアの根本的思想の一つ。
 己達天使が何よりも華美と信じ、地上に生きる者達を愚劣とみなして滅ぼそうとする。下らなすぎるとんでもない差別意識と思い込みによって、天使に値する存在以外を皆殺しにしようとする。
 セラピムはスカイピアの思想に気づいてしまうと全身に畏怖からくる震えが走る。
 否定の魔女トレヴィーニとは違う内面からくる狂気に、立ち向かう手段が見つからない。

 誰か、助けて。

 セラピムが口だけ動かし、そう呟いた次の瞬間。
 アカービィを苦しめていた筈の巨大円盤が縦一文字に切られ、下のマグマへと落ちていったのは。
 ジスが気づくと同時に、巨大円盤を真っ二つに切ったその身にシャインを宿したアカービィがジス目掛けて勢い良く剣を振り下ろす。
 ジスは己の鎌を出現させて、その刃で剣をギリギリ防ぐと素早く押し返す。
 アカービィは少々吹き飛ばされるもののすぐに体制を整え、黙ってジスに剣を向ける。そこから感じられるのは――殺意。
 その姿を見たジスは鎌を両手で持ち、己もアカービィに刃を向けながら叫ぶ。

「……良いだろう、邪なる炎の民よ。特別に俺が相手をしてやろう!!」

 紫炎の悪魔と漆黒の天使が持つ剣と鎌が互いにぶつかり合い、特有の金属音が空間内部に響き渡る。
 ジスは鎌で攻撃を防ぎながら、小声で短い詠唱を唱える。すると半透明のカプセルが出現し、セラピムを閉じ込める。
 それを見たアカービィが目を見開き、己の身から炎を出現させて剣に纏わせると何度も何度も叩いてジスを押していく。
 最初こそ押されたままになるもののジスはアカービィが剣を引いた一瞬の隙を見抜き、鎌の湾曲部分で彼の顔面にぶつける。続けて呪文を唱えてアカービィの四方八方から黒い羽を出現させて突き刺していく。
 なすがままに羽が全身に突き刺さるものの、アカービィはその体を炎で包んで羽を燃やし尽くす。だが傷そのものが埋まるわけではなく、羽が刺さった事によって出来た傷から血が流れ続けていた。
 ジスは翼を羽ばたかせ、鎌を持って勢い良く回転しながらアカービィ目掛けて突撃する。
 アカービィは直撃する寸前で上昇し、すぐに下降してジスの真上から剣を突き刺しにかかる。だが突き刺さる直前で防御魔法陣が出現し、攻撃を弾かれてしまう。
 防御魔法陣が攻撃を弾いたと同時にジスは回転をやめ、真上にいるアカービィ目掛けてその懐まで接近する。
 そのままジスはアカービィが反応するよりも早く、鎌の先を彼の左頬に突き刺した。

「アカービィくん!!」

 その光景にセラピムが悲鳴にも似た声を上げる。
 するとアカービィはその声に答えるように、左手で己の左頬に突き刺さった鎌をつかむと己の炎で一気に鎌ごとジスを燃やしにかかる。
 炎に包まれたジスはすぐに鎌を抜き、アカービィから回転しながら離れる。
 アカービィが喰らった傷は幸いにもそれほどまで深い傷ではなかった為、致命傷ではないものの出血が止まらない。
 だがそれがどうしたと言わんばかりにアカービィは剣を持ち直し、回転を終えて体制を整えたジスを睨みつける。

「天使の中でも特別な存在であるこのジスに火傷を負わせるとはな。少しだけ見直したぞ」

 回復魔法でも使ったのか、見たところ全くの無傷のように見える。だがジスの傷だらけの左足の肌が爛れ落ちており、酷い火傷状態になっているのが分かる。
 咄嗟に魔法を使ってダメージを体の一部分に集中させた、というところか。
 アカービィは瞬時にジスの火傷の位置と理由を見抜く。
 一方でジスは左足の火傷なんぞ元から存在しないと言わんばかりに平然とした様子で挑発する。

「……しかし俺の同属の言葉で一気に反撃するとはな。偽りの翼を持つ劣等な愚者の癖して、天使に惚れているとでもいうのか?」
「なっ!?」

 ジスの言葉を聞いて反応したのはアカービィではなく、セラピムの方だ。
 待って。惚れているってどういうこと? 誰が誰に対して? えーと、この場合アカービィ副隊長が…………私に?
 話の意味を理解しようとすればするほどセラピムの顔が下にあるマグマ並に真っ赤になっていく。頭にやかん置いたら、一瞬でお湯が沸くぐらいの真っ赤さだ。
 一方でアカービィはその頭部にシャインを宿しているせいで無表情となっているまま、ただその手に持つ大剣に炎を宿していく。
 そして一言、こう答えた。

「それは俺のモノだ」

 その言葉はジスの言葉に対する肯定そのものだった。同時にセラピムが沸騰してぶっ倒れた。
 ジスはセラピムが倒れたのもスルーし、くすくす笑っていると思ったらいきなり大声で笑い出した。

「ははははははははははは!! これは滑稽だ! 悪魔の容姿をした滅びしか生まない炎の化身でしかない貴様が、最も尊く美しい絶対なる存在の天使に惚れているとは!!」

 アカービィは何も言わず、ジスの嘲笑を聞くだけだ。
 ある程度笑うとジスはすぐに冷静さを取り戻すと、真剣な顔つきになってアカービィに鎌を向けてこう言った。

「笑い話にはなるが現実にはできないな。彼女が天使である以上、スカイピアの民だ。決して貴様のモノにはできない」

 次の瞬間、紫炎悪魔の剣と漆黒天使の鎌が再びぶつかり合った。

 一方で光の龍を全滅させたモザイクは乱入せず、ただアカービィとジスの戦いを眺めていた。
 戦う事は嫌いでないものの、“トレヴィーニが愛した人物”相手では己の勝機が低すぎる。幾ら自分の体が特別だといえど、大国の連中と比べてしまうと勝機は微妙だ。
 その時、モザイクの横に唐突にモニターが出現してきてディミヌが映る。

『モザさ~ん! 侵入者反応そっちから出たんですけど一体何がどうしたんですか~!?』

 酷く慌てた様子で、モニターが普通の窓ならば身を乗り出してモザイクの胸ぐらつかんで聞いてきそうな勢いだ。
 しかしモザイクは全く慌てず、冷静に答える。

『スカイピアの天使が乱入してきた。神の為の剣、と申していたよ』
『エ、神の為の剣<エデル>~!? うわうわうわ、トレ様が入れてくれたデータベースにはスカイピアの中でもめっちゃ強い奴等の集まりみたいですよ。特に若くして長についたジスって男だったら最悪ですよ! なんたってマナ氏レベルの化け物なんですから!!』
『そのジスだよ。最悪なことにね』
『ま、マジですか~!? もーっ、トラブル起きすぎ~!!』
『私に言われても困る。ところでディミヌ、君がこっちに連絡したということは協力可能と見てよろしいか?』
『はいです!』
『なら強硬手段に出る。トレヴィーニ閣下と一対一でやりあえるマナ氏レベルの化け物と戦う事になるのだけはごめんだ』
『了解です。強制転送+隔離はディミヌ・エンドの得意技なので』

 モザイクはそう言って足元に魔法陣を展開させ、幻想空間を閉じる体制に入る。
 ディミヌもモニターを閉じ、電脳空間内部にて様々なプログラムを展開させてモザイクのサポートに移る。
 アカービィとジス、セラピムはモザイクに全く気づかない。
 それを好機と見たモザイクは魔法陣を輝かせ、勢い良く叫ぶ。

『幻想空間「火山上部」をこれより解除。これより通常空間に戻る!』

 同時に四人のいる空間が歪み出し、世界が歪曲し始める。
 真っ赤な空間は様々な色をまとってぐるりぐるりと廻る。しかしこの空間の中にいる者達(約一名気絶)は誰も動じず、ただ空間が安定するのを待つ。
 その瞬間はすぐにやってきて、真っ赤な空間から一転して城の中の豪華な一室になった。
 直後、ディミヌ・エンドの声が部屋から響いてきた。

『転送システム作動! サザンクロスタウン上空にぶっ飛ばします~!!』

 するとアカービィ、ジス、セラピムが豪華な一室に足をつくよりも早く、いずこへと転移されてしまった。
 結果、この部屋にはモザイクただ一人が足をついた。
 モザイクの自室に値する部屋だった為、ディミヌの強制転送が間に合って一安心した。だって間に合わなかったらアカービィとジスのバトルで部屋全体が滅茶苦茶になるのは目に見えていたから。修復自体は魔法で簡単なんだけど、結構しんどいしね。
 ジスという面倒な輩の乱入のせいで、己の出番と選定の影が薄くなってしまったもののモザイクは己にかかりかけていた火の粉を振り払えただけでもホッとする。
 そのままモザイクは何時の間にか出現していたモニター越しのディミヌに尋ねる。

『ディミヌ、三名を上空に飛ばしたといったが?』
『はい。安心してください、結界外部にまとめて転送しました。この辺はトレ様に軽い否定かけてもらってたんで助かりました』
『……現在どうなっているか把握できるか?』
『現在やっている真っ最中です~。って、あ』
『どうした?』

 元気良く答えていたディミヌだったが、何かとんでもないものを見つけたのか目が点になって硬直した。
 モザイクが体を傾げて尋ねる。ディミヌは少々戸惑いがちに答える。

『……ジスがセラピム五番隊副隊長補佐官持ってスカイピアがあると思われる方向の上空に向かって飛んでってLOST。アカービィ一番隊副隊長もそれを追いかけて一緒にLOSTしちゃいました』
『……厄介払いが出来たんだからよしとしよう』

 全くもって選定になってない結果に終わってしまったが、スカイピア最強の戦士でありトレヴィーニと互角に渡り合った事がある存在と戦う羽目にならない分だけマシだ。
 トレヴィーニの八百年前愛していたと話していた存在と戦う羽目になったら、確実に殺されていただろう。
 何せトレヴィーニが個人を愛する時、その個人にならば殺されてもよいという意思表示。そんな人物、強すぎるに決まってるだろ。



 アカービィ&セラピムVSモザイク――ジスのせいで無効試合。



 次回「架空の勇者ソラ」






  • 最終更新:2014-05-28 00:16:26