第三十五話「シアン奪還作戦!」


 こんにちは、ラクーンシティ化したサザンクロスタウンから奇跡の大脱出を終えれたダム・Kです。
 ミラリムの我侭で紅茶を飲みにホテルに戻ってきた筈が、流されるままに森へと飛ばされてしまいました。
 自分は休みたかったんですけど、あの状況で逃げられるわけが無いし逃げる気も起きません。……女の子が誘拐された現場に立ち会って見過ごすなんて普通やったらいけないことだしね。
 でもさ、この事態は全くもって予想外。その理由は簡単。

「……」

 ミラリムワープで飛んだ先には敵さんがわざわざ待っていてくださったんですから。
 敵さんは二つの紫バンダナで茶色の帽子と下半身を隠すようにしている眼鏡をかけた男性だ。何でか兎の耳っぽいふわふわした何かが帽子から垂れ下がっているのは気にしないでおこう。カービィ族ってその辺すっげー適当に出来てるし。

 ミラリムワープを使ってこの森に飛んだのは自分含めて四名。
 切り込み隊長兼壁役としてチャ=ワン、まだナースさんからコピーの元を借りてる為に臨機応変可能なタービィ、唯一自他に回復させられるのでナースさん、そんでもって後方からの援護要因として自分。
 ミルエちゃん、ツギ・まち、ちるちゃんは部屋で待機。場合によりミラリムワープで出撃。
 ナグサは鏡越しに指示を出す事が出来ると聞いた為、自らナビゲーション側に移動。
 これ全部ナグサがミラリムと意見を合わせて決めた事なんだけど……絶対彼、大国防衛隊に入隊したら良いトコ行くよ。

 まぁ、こんな感じでナグサ曰く「RPGシステム」みたいな方法で敵さんと対峙する自分達。
 シアンちゃんだっけ? さらわれた子がいないのを確認したタービィが一歩前に出て物静かな敵さんに話しかける。

「狐の嬢ちゃんをさらったのはお前かい?」
「……正解」
「そうか。んで、いないのは何でだ?」
「……答えられない」
「それじゃ質問を変えよう。目的は一体何だ?」
「……答えられない」
「冥王様の歌を狐の嬢ちゃんが知っているからさらったのは確かか?」
「……答えられない」
「答えられない答えられないって要するに返答全部拒否か? ……それなら力ずくで吐かせてやってもいいぜよ?」

 淡々とした会話ですけど、空気はかなり緊迫してます。
 どういうわけか知らないけどタービィ、一番さらわれた子を心配してる。サザンクロスタウンで出来た縁なのか。それとも別の理由があるからなのだろうか。まぁ、考えていても始まらないんですけどね。
 何時まで経っても答えようとしない敵さんだったけれど、タービィさんが最後に出した脅しの言葉には違う返答を出した。

「……出来るものなら」

 返答=挑発でした。さっきの答えられない連呼と同じ無表情無感情で、普通に聞き逃しそうな小さな声でしたけど。
 同時に彼の足元に白色の三角形型魔法陣が展開され、魔力を放出しながら回転していく。
 魔法陣の形は確かその人の好みや能力で変わるって聞いてたからそれほど深い意味は無かった筈……だけど、確か三角形型の方が大型魔法発動するパターンに多いって聞いたような……。
 とりあえず何時でも花びら弾幕は出せるようにしておかねば。もう既に他の三名も戦闘スタンバイ出来てるし。

「幻想空間『白だけの箱庭』発動」

 敵さんが初めてハッキリとした声で魔法発動の合図をあげる。
 すると三角形型魔法陣が勢い良く回転し、そこから広がっていくように森特有の草や小枝が覆っている緑と茶色の土で出来た地面を硬い硬い白い地面が覆っていく。
 ある程度広がっていったところで白い地面から浮き上がっていくように恐らく同じ素材だろう白い壁が盛り上がっていき、四方の壁がそれぞれ一定の高さになると今度は中心に集まっていくように天井を作り上げていき、敵さんを含めた自分達を閉じ込めるように白の箱庭が出来上がる。
 ……魔法使いによるステージ製作魔法「幻想空間」は厄介だ。ある程度向こう側の有利な属性で動かされてしまうし、最悪の場合キング・ダイダロスみたいな手を使われる事もあるし。固有結界と似てるけど、実際は結構違うからごっちゃにしないように!
 戦いの舞台が整ったところで敵さんは自分達に目を向け、何か呪文を唱えようと口を開く。
 それに気づいたチャ=ワンが刀を抜き、地面を勢い良く蹴ってそのまま敵さん目掛けて切りかかる。
 敵さんは呪文を中断し、チャ=ワンの刀を後方にジャンプして避ける。
 敵さんが上手く着地できたと同時にタービィが素早くカッターを投げつける! ……何時コピーの元食べたんだ、この人。
 だけども敵さんが飛んできたカッターに目を向けた途端、いきなり地面から敵さんを守るように白の壁が盛り上がってカッターを防ぎました。
 ……え!? 呪文唱えたか、あの人!?

『今の攻撃からは魔力反応探知できず! 能力と分類していいよ!!』

 その時、ミラリムの鏡を通して自分等四人にテレパシー連絡(「ミラリムがやったら?」って提案したんだけど苦手だって言い切りやがった)できるナビ役のナグサが解説を入れてくれた。ありがとう!
 ということは物質変換か、この特定の物体のみを自由に操る能力者……。さっきの壁とこの幻想空間を形作っているモノが同じ性質なら相手に地の利がありすぎるな、こりゃ。
 まぁ、諦めるつもりはございませんが。
 その敵さんはというと切りかかってくるチャ=ワンの刀とタービィのカッターを必要最低限の動きで避けている。
 けどコンビネーションが良い風来坊の二人はどちらかが避けられた隙に、どちらかがすかさず切りかかっているから敵さんの体に確実にダメージを与えていっている。
 援護したいけど二人が敵さんの近くにいすぎて攻撃できないんだよなぁ。離れてくれれば花びら弾幕やれるのに。
 その時、敵さんの下のバンダナから目にも止まらぬ速さで細長い何かが出てきて偶然前に出ていたタービィを勢い良く突き飛ばした。

「ぐっ!?」
「タービィ!」
「我に刃を向けし敵に裁きの雷撃を与えん!」

 敵さんは突き飛ばしたタービィに向かって早口で呪文を唱え、雷撃を放つ。
 タービィの頭上に雷撃が直撃する寸前、自分は暗黒の穴をタービィと雷撃の間に出現させる。雷撃は暗黒の穴へと吸い込まれていき、そのまま暗黒の穴と共に姿を消す!
 暗黒使いをなめんでいただきたい。不幸役ばっかだと思ったら大間違いだ!
 敵さん、暗黒で避けられるのは想定外だったらしくわずかに「え」と声が漏れた。
 その隙をチャ=ワンは逃さず、敵さんの真横に回りこむとそのまま勢い良く刀を横に振る。
 ガキィン。
 硬いもの同士がぶつかり合う音が箱庭内部で響く。
 何が起きたんだ? 敵さんとチャ=ワンを見る自分達。……って何アレ? 何ですか、アレ?
 刀を受け止めてるのって、本でしか見る事が無い人間を形作っている……骨の腕……なんですけど。それが敵さんから生えてて己の腕みたいに、いや、腕そのものと言った感じなのは何で? 何で何で何でー!?
 その時ナースさんに支えられて立ち上がったタービィが腕を見て、声を上げる。

「アレだ! オレっちもアレで吹き飛ばされた!!」
「って事は特異融合型……? ナグサ君!」

 ナースさんが呼びかけると共に、ナグサのナビが伝わってくる。

『能力解析たった今完了! ナースさんの読みどおり彼は特異融合型! 融合ベースは「骸骨」で、能力は「カルシウム操作」だよ。簡潔に言うと骨なら自由に練成操作が可能。ベースがベースだから防御力は高いし、魔法使いだから魔力も相当なもの! 大技かけられる前に高威力攻撃でぶっ飛ばさないとやられるよ!!』

 という事はこの箱庭、全部骨と同じ素材……? うわっ、何か気持ち悪っ!!
 いや、それどころじゃないか。防御力が高いならチマチマした攻撃はあんまり伝わってないって事になる。その証拠に敵さん、ピンピンした様子でチャ=ワンの刀と押し合ってるし。良く見るとチャ=ワンの方が若干押してるから力は低そうだ。
 というわけで動かないその隙、いただきます。
 自分は身についている花びらを敵さん目掛けて一気に飛ばす。上手く迂回させ、チャ=ワンと正面からやり合ってる敵さんの背中を狙う。結構素早いから気づいても避けきれないぞ、こいつは!
 だけど敵さんはちらりと自分の方を見て、気づいたのか正面以外の三方向を白い壁出現させる。
 背中に当てるつもりだった花びらは出現した白い壁に全てぶつかってしまい、全て完璧に防がれてしまった。
 思わず『何で!?』と書かれた立て札出してしまった。だって今の当たる自信あったのに!

「……ダム・K、あんた顔に出すぎ。そんなニヤニヤした顔だとバレるわよ」
「右に同じく。アレはバレバレにも程がありすぎる」

 その理由をナースさんとタービィが即答してくださいました。……ニヤニヤしすぎて攻撃を察知されたんですね、自分。
 次の瞬間、白い壁で身を隠した敵さんがチャ=ワンの刀を両手でつかんで勢い良く自分達目掛けて投げてきた。
 あいつ、あんなパワーあったんか!? ってか気のせいかな? ナースさんとタービィじゃなくて自分に向かって飛んできているのは気のせい……じゃねぇ! 思い切りこっち目掛けて飛んできてる!!
 大慌てでその場から離れようとしたけど時既に遅し。
 ガッコォン!
 派手な音を立てて、己の顔面にチャ=ワンが激突。しかもよりもよって頭に被ってる茶碗が目玉に当たったから、滅茶苦茶痛い。
 のた打ち回りたいのを堪えながら、気絶してるチャ=ワンを駆け寄ってきたナースに引き渡す。
 同じく駆け寄ってきたタービィがおっきな目玉を両手で抑えてる自分を心配する。

「ダム公、大丈夫か?」
『目玉が痛い!』

 正直に立て札で気持ちを表した。
 そしたら、チャ=ワンをその場に寝かせたナースさんがでっかい注射器を出現させて怪しい笑みを浮かべながらこっち向いた。目が獲物を見つけた肉食獣なのは気のせいじゃない。

「それじゃ……治療しないとねぇ?」

 ナースさんナースさん、看護士にとって注射器が必需品なのは知ってます。それが治療に必要な道具なのも知ってます。けどさ、その大きさは凶器を通り越して殺人道具でしかないんですけど……!
 あ、ナースさんこっち来ないで。そんな顔でこっち来ないで。お化け屋敷よりも怖いよ、ダイダロスよりも怖いよ。
 敵さん、空気読まないで攻撃して。じゃないと自分、痛い目に合いそうだから。……お願いしますから白い壁の中から様子見してる状態でいないで!
 あ、タービィが敵さんに向かって走り出した。敵さんも出てきてタービィと正面からやりあいだした。
 なるほど。タービィが敵さんの気を引く作戦に出た……ってことは?
 自分が慌ててナースさんを探すと、彼はすぐ隣に立っていて自分に注射器を振り下ろす直前でした。

「大丈夫。ちょっと川が見えるぐらいですぐ済むから!!」

 逃げようとする前に注射器の針が振り下ろされ、グサッと刺さった。



 ◆◇◆今回ナレーションのダム・Kがノックアウトされた為、何時ものナレーションでBパートに続きます◆◇◆


 
 ■ □ ■

 ナースの治療攻撃を食らい、気絶したダム・Kを他所にタービィはカッターを手に持って敵のグレムの骨手と押し合っていた。
 両者互いに一歩も引かない中、グレムはカッターと押し合っている己の右腕から冷気を発生させてタービィをカッターごと凍らせようとする。
 タービィは即座にカッターを手放し、グレムから数歩離れると元からの能力の一つであるボムをとりだして一気に三つ投げつける。
 凍ったカッターを投げ捨てていたグレムはボムも防ごうとするけど一歩遅く、三つともまともに食らってしまって爆発の勢いで数メートルほど吹き飛んでしまう。
 吹き飛んだグレムに向かってタービィはヨーヨーを発動し、その長い腕目掛けてヨーヨーを投げつける。
 だがグレムはヨーヨーに寸前で気づき、身を捻って直撃するのを避けると詠唱する。

「炎よ、彼奴の足を焦がせ!」

 するとタービィの足元に赤い魔法陣が出現し、それから火柱が上がってタービィの体を包み込む。
 火柱を直撃しながらもタービィはすぐに外に飛び出て、硬い白の地面を転がってその身を包む炎を強引に消していってから立ち上がる。
 グレムはタービィに追い討ちをかける為に詠唱を唱え……ようとしたのだが、いきなり剛速球で飛んできた巨大注射器が顔面にダイレクトに当たってしまった。
 タービィとグレムの両者共に全く予想していなかった攻撃にタービィは思わず間抜けな声を出してしまう。

「へ!?」
『ご心配なく。治療を終えたナースさんの援護です』

 すぐさまナグサのフォローが入る。呆れた声なのは絶対気のせいではない。
 とんでもない援護攻撃だと思いながらもタービィはボムを取り出し、顔面に巨大注射器を食らったグレムに向かって投げつける。
 酷い鈍痛に苦しみながらもグレムは飛んできたボムに対し、素早く詠唱を唱えてシールドを出現させて防ぎきる。
 攻撃が止んだと同時にグレムはシールドを消し、一気に走り出してタービィ目掛けて骨の腕で殴りかかる。
 だがタービィに直撃する寸前、横から飛んできた大きな茶碗が骨の腕に当たって攻撃を中断させられてしまう。
 グレムは茶碗の飛んできた方向に顔を向ける。
 そこには気絶から復活したチャ=ワンが戻ってくる茶碗をキャッチし、被っている姿があった。
 チャ=ワンの姿を確認したタービィが内心ホッとしながら、声をかける。

「起きるの遅いぜよ!」
「すまんでござる! 今、一気に片をつけるからそれで許されよ!」
「嘘だったら針千本飲めよ!」

 冗談めいた口調でタービィは返しながら、「プラズマ」のコピーの元を取り出すとチャ=ワン目掛けて投げつける。
 チャ=ワンはコピーの元(飴型なので誰でも食べれます)をキャッチするとそれを口に含み、プラズマをコピーすると己の持つ刀に電撃を纏わせていく。
 様子見していたグレムは何かが来ると判断し、己の能力を発動させる。
 すると二人の足元から骨の腕が合計八つ出現し、彼等の両手両足にしがみついて動きを拘束していく。骨の腕がギリギリと力強く握り締めていき、二人の口から痛々しい声が漏れる。
 それを見たナースが気絶してるダム・Kを置いて猛ダッシュでグレムに接近する。
 グレムは骨を操りながらも三角形型魔法陣を展開させ、ナースが己に攻撃を加えてくるよりも早く呪文を発動する。

「集え、風よ! 切り裂け、風よ! 目の前にある不純なる者を汝の手で消し去れ!!」

 するとナースの周囲に風が集まっていくと、風は鋭いカマイタチへと変貌していって彼の全身を切り刻んでいく。
 四方八方から風の刃で傷つけられていき、ナースは思わず立ち止まってしまうものの倒れる事は無く目の前のグレムを勢い良く睨みつける。
 絶対に倒れないという気合のナースにグレムは何も感じていないのか、更に攻撃を続けようと口を開く。
 だがそれよりも早くナースは痛みを堪えながらグレム目掛けて走り出し、懐へと潜り込むとその顔面に拳をぶち込んだ。
 グレムはまともに食らってしまい、あまりの痛みに怯んでしまう。
 ナースはそれを見逃さず、素早く足払いをかけてグレムをこけさせると隠し持っていたコピーの元「ストーン」を飲み込んでジャンプする。
 グレムがナースの次の攻撃に気づくも時既に遅し。
 硬い硬い無敵の石に変貌したナースがグレムに勢い良く落下し、大ダメージを与える!
 まともに食らったグレムは潰れた蛙のような声を出し、気を失ってしまう。
 同時に幻想空間『白だけの箱庭』が解除され、辺りが最初に出てきた時の森へと戻っていった。

『え、エグい……!』
「内臓はみ出てないだろな、あいつ!?」
「い、一応骸骨との融合型だから大丈夫とは思うのでござるが……!」

 でもナビ役のナグサと風来コンビはそんな事よりもグレムの方を心配してた。
 そりゃ思い切り同サイズの石で押しつぶされる瞬間を見てしまえば、色々な意味で痛々しい。
 ストーンを解いたナースはノビたグレムから飛び降り、グレムの容態をザッと見るとなんともないように風来コンビに振り返る。

「大丈夫よ。こいつ衝撃で気絶しただけだから」
「……骸骨との融合型じゃなかったらはみ出てたぞ、これ」
「とりあえず拘束し、シアン殿の居場所を吐かせるべきでござろう。恐らくこれほどの魔法使いならば魔法で何処かに隠している可能性が高いでござるからな」

 硬い骸骨との特異融合型であるグレムに内心ホッとするタービィ。
 その隣でチャ=ワンはどこからともなく取り出した縄でグレムを縛りながら、提案する。
 だがその提案はテレパシーで届いた赤薔薇状態のミラリムによって却下された。
 何故ならば、

『無駄よ。シアンは森の中に隠されていないのだわ』

 シアンはこの森の中にいない事が判明したのだから。
 赤薔薇の言葉に三人が驚き、互いの顔を見合わせる。その際やっとダム・Kが復活したけどそんなに気にしない。

『今、シアンの反応を探したんだけど……少しずつ三日月島から離れていってるわ。多分今の戦闘の間に共犯者が誘拐したんだと思うわ』
「なら大急ぎでオレっち等をそっちに転移しろ!」
『この人数を一気に送り込むのは難しいのだわ。さっきナグサに指示されてミルエを送り込んではいるけど、妨害されてるようだし』

 必死なタービィの言葉に対しても赤薔薇はドライな反応だ。
 まんまと囮に引っかかってしまったと今更後悔しても遅い。このままではシアンを三日月島から連れ去られてしまう。
 どうすればいいんだとそれぞれ苦悩する中、赤薔薇はダム・Kに話しかける。

『……ミーディアム、あなたを大砲として使う許可を頂戴』
「?」
『ミラリムの契約者であるあなたは誘拐犯目掛けてぶっ飛ばせるって言ってるの。今はこれが最善の手段だけど、さすがにあなたの意思を無視してやるつもりはないのだわ』

 その言葉を聞いて、ダム・Kは表情を変えて立て札を取り出した。もちろんその立て札には「やれ!」と力強く書かれていた。
 赤薔薇は己の能力で立て札の文字を読み取ったのか、どこか嬉しそうな声色で了承した。

『了解。それでこそ、赤薔薇の家来なのだわ』

 するとダム・Kの足元に鏡が出現する。
 ダム・Kはその鏡に吸い込まれそうになり、必死に抵抗するもののむなしく飲み込まれてしまう。そして鏡ごとこの場から消え去ってしまった。
 これでシアンの下に送り込めたのかと残った三人が思う中、グレムを縛っていた縄がいきなりぶちぶちっと切れだした。
 三人が一斉に警戒し、グレムに体を向ける。
 グレムは気絶から回復しており、戦闘時と同じ無表情のまま淡々と名前を口にする。

「タービィ、チャ=ワン、ナース、ダム・K、ナグサ、ミルエ。この六名を反乱軍に対する新たな危険分子と判断」

 そう言うとグレムは足元に三角形型魔法陣を展開し、そのまま転移魔法でこの場から姿を消した。
 後にはタービィ、チャ=ワン、ナースの三名が残された。

 ■ □ ■

 森から出た先にある草原では発砲音が何度も何度も響く。
 発砲音だけじゃない。バサバサと何かが羽ばたく音が複数耳に入ってくる。
 それもその筈。拳銃を武器にするミルエが今、戦っているのは無数の蝙蝠なのだから。
 ミルエの銃弾を何体かが食らうものの、蝙蝠達は一箇所に集まっていくと元のカービィの姿へと戻っていく。

「お前、銀の弾丸は反則だぞ! それ、俺達みたいな種族にはきっついの分かってんの!?」

 背中に黒の翼を生やした濃い灰色の髪を持つ白いカービィの男の子だ。左目部分が包帯で覆われているものの、彼の顔は幼さを残していて可愛らしい。
 けれども先ほど蝙蝠に分裂してミルエの銃撃を避けるなどしていた為、可愛いだけの男の子ではない。
 男の子の言葉にミルエは拳銃を向けたまま言い返す。

「分かってるからやってるんだよ? それよりもいい加減退いて!」
「やだね! 俺達にも引けない意地があるんだよ。だからその意地を邪魔する奴等は敵とみなす!!」

 男の子はそう言い返すと翼を羽ばたかせ、ミルエへと突撃する。
 ミルエは突撃してくる男の子に対し、素早く連射するものの男の子は直撃する寸前で無数の蝙蝠になって攻撃をかわす。そのままミルエの背後へと回り込み、元に戻ると後ろから噛み付きにかかる。
 だがミルエはすぐに横に転がって避けると、転がったまま拳銃を無数の蝙蝠に向けて発砲していく。
 再び何体か落とされていくものの蝙蝠達は銃弾なんて気にせず、ミルエの体を覆っていくとそのままありとあらゆるところから血を吸おうと彼女の全身に噛み付いていく。
 無数の痛みにミルエは表情を歪ませるものの、拳銃を己の頭に当てて「ファイア」を発動させる。
 するとミルエの体は火達磨となり、蝙蝠達さえも巻き込んでいく。
 突然の炎に蝙蝠達は耐え切れなくなってミルエから離れていき、再び男の子へと戻っていく。
 男の子が離れたのを確認するとミルエは火達磨を解除し、もう一つ拳銃を出現させて二丁拳銃にすると男の子に向けて強く言い切った。

「ざーんねん! ミルエはそんな攻撃じゃやられないよ!」
「良い気になるんじゃねーっての! 吸血鬼ギンガの不死身さなめんじゃねぇ!!」

 ギンガはそう叫ぶと己の周囲に複数の魔力が宿った魔法球を出現させると一斉にミルエ目掛けて飛ばしていく。
 ミルエは飛んでくる魔法球を全て撃ち落とすとギンガに狙いを定め、右の拳銃から大きなプラズマ波動弾を発射する。
 飛んできたプラズマ波動弾に対してギンガは素早く上空に飛んで避ける。
 それを確認したミルエは素早く左の拳銃を飛んだギンガに向け、何度も何度も連射する。
 ギンガは翼を羽ばたかせ、飛んでくる銃弾を避けていくものの途中から銃弾の数が増えていき、いくつかはその身に直撃してしまう。
 墜落しそうな痛みに堪えながらもギンガは素早く己の正面に魔法陣を展開し、呪文を唱える。

「暗黒の刃よ、俺の前に立ちはだかる生意気娘を切り刻め!!」

 すると魔法陣から巨大な黒く円型の刃が出現し、ミルエ目掛けて飛んでいく。
 ミルエは素早く刃を避ける。
 黒い刃は地面に思い切り刺さるものの、勢い良く回転しながらミルエ目掛けて突進していく。
 さすがにこれはミルエも予想しておらず、防御手段も無いので大慌てで逃げ出すしかなかった。
 ギンガは追い討ちをかける為、ミルエ目掛けて急降下しようと体勢を整える。
 しかしその時ミルエを追い掛け回していた黒い刃の四方から壁が生えてきて、その行動を防いだ。
 一体何が起きたとギンガは目を丸くしてしまう。
 ミルエも突然生えた壁に驚きながらも、刃の動きが封じられた為に隙が生じたギンガを見逃さずに素早く二丁拳銃を撃った。
 いきなりの攻撃にギンガは反応が遅れてしまい、その身に二つの銃弾を食らってしまって痛みに耐え切れず地面へと落下する。

「ミルエに勝つなら、夜明国を生き残れる度胸がないと無理だよ!」

 落下したギンガに対し、ミルエは拳銃を回転させながら勝者の顔で言い切った。
 だけど少し不思議に思う。この壁は一体誰が生やしたのだろうか?
 術者が倒れたので黒い刃そのものは消えているものの、壁そのものは残ったままだ。
 ミルエ自身は銃を媒介にした能力しか使えない為、第三者がやったとしか思えないのだが……。

「戦闘が起こってると思って来てみたんだけど、そんなにたいした敵じゃなかったみたいだね」

 その時、草原の向こうから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
 ミルエがそちらを振り向くと、ドロンと軽い少なめの煙と共にケイトがその場に出現する。
 忍者そのものといった感じでいきなり出てきたケイトにミルエはびっくり。

「うわお! ケー君、何時の間に!?」
「人探しの最中で偶然通りかかっただけだよ。それよりもあの馬鹿は何?」

 人探ししてるのに何故姿を消しているのか疑問であるけど、ミルエは気にせず質問に答えた。

「シアンちゃんを誘拐した一味だよ。でもあいつ、別の仲間にもうシアンちゃん引き渡した後でミルエは足止めされちゃったの!」
「誘拐!? ……僕も手伝うよ」
「ありがと!」

 誘拐と聞いたケイトの協力も得られたその時、草原の向こう――海辺から大きな声が聞こえてきた。

「いぃっでえええええええええ!!!!」

 その大声を聞いて二人は驚きながらも、互いに顔を見合わせて頷くと海辺に向かって走り出した。
 この時ギンガの姿がいつの間にか消えていたのだが二人とも気づかなかった。

 ■ □ ■

 ゴーーーーーーーン!!

「いぃっでえええええええええ!!!!」

 何かと何かがぶつかった大きな音と涙交じりの大声がすぐ隣から聞こえた為、心地よい揺れの中で眠っていたシアンは飛び上がるように目を覚ました。

「な、何々!? 一体何が……って、なんじゃこりゃ」

 慌てふためき、周りをキョロキョロ見渡して……あきれ返った。
 だって目の前で二人の男が頭抑えながら痛がってて涙目なんだもん。
 片方は何故かここにいるサザンクロスタウン生還者のダム・K。もう片方は背中に刀、頭にお椀を被ったどことなくチャ=ワンと似た感じのする男性だ。
 一体何が起きてるんだとシアンが呆気に取られる中、頭にお椀を被った男は頭のタンコブに痛がってるダム・Kを涙目で睨みつける。

「ふ、普通はカービィ弾丸なんてありえんでござんす……!」
「~~~~!!」

 でもダム・K、とっても痛い+喋れないのでゴロゴロその場に転がるしか出来ませんでした。
 シアンはそんな間抜けな光景を見て、ダム・Kがお椀を被った男に向かって落ちてきてゴッチンコしたのだと理解する。
 何が悲しくてこんな阿呆な光景を見なければいけないのだろうと思う中、その場が揺れてふらついて尻餅をついてしまう。尻餅をつき、ちょっと声がもれるもののそこで気がつく。
 自分が今いるのはホテルの一室ではなく不規則且つ常に揺れ動く丸い入れ物――巨大なお椀の中だということに。
 何がどうなってるのと彼女は動揺する。
 その時、漸く痛みが退いた男はシアンが目覚めている事に気づいた。

「おや、歌姫殿起きちゃったでござんすか」
「な、何? あんた何?!」
「拙者はオ=ワンでござんす。貴殿が冥界を統べる死神王カーベルの歌を知る唯一の歌姫殿でござんすね?」
「……は?」

 訳の分からない事を言われ、シアンは思わず間抜けな声を出してしまう。
 カーベルの事は一応知ってはいるものの、歌姫なんて全く似合わない称号は取った事も無いし一生取る気も無いのだが。
 そんなシアンを見て、オ=ワンは体を傾げる。

「おや? ギンガの話ではカーベルの歌をシャラの歌と言って泣き喚いていたのでござんしょ?」
「!?」

 シャラの歌。その単語を聞いて、シアンは三日月祭りの事を思い出す。
 鎮魂歌として歌われたあの歌がシャラが何時も歌っていた歌そのもので、忌々しいキング・ダイダロスの事を連想して思い出してしまったあの時の事を。
 再び脳裏にあのカニバリズムが蘇り、シアンは猛烈な吐き気を催して口を手で抑える。
 それを見たオ=ワンはびっくりして慌てふためく。

「あわわわわ!? やばい、何かトラウマ踏んだでござんす?!」
「うっさい! 慌てるぐらいならさっさと帰せ!!」

 慌てふためくオ=ワンの姿にイラつき、シアンが怒鳴りつける。
 だがその言葉を聞いたオ=ワンは落ち着きを取り戻し、さっきとは打って変わって真剣且つ重々しい態度で話し出す。

「……それは出来ない相談でござんす。忌まわしき大帝国と世界を滅ぼす否定の魔女、この両者に同等と戦い合える魂の力を操る歌を唯一知っている歌姫をここで手放す事は拙者達にとって自滅行為も良いところ。本当のカービィ達が住まうべき国を作る為に……貴殿が必要なのでござるよ、歌姫殿」
「え? え? ちょっと言ってる意味が全然分からないんだけど……!」

 オ=ワンが真剣なのも、意志を曲げようとしないのも、良く伝わってくる。
 だけどシアンからすれば全く意味が分からないし、ただ己をどうにかしようとする悪者でしかない。
 シアンの頭が追いつかず混乱している最中、痛みから漸く回復したダム・Kが看板を取り出して後ろからオ=ワンの背中を思い切りどついた。
 思い切りどつかれたオ=ワンは顔面からずっこけ、倒れる。
 いきなりの事にシアンが目を丸くする中、ダム・Kは看板をシアンに見せながら手招きする。

『逃げるよ!』
「あ、うん!!」

 看板に書かれた文字を見てシアンは慌てて立ち上がってダム・Kの傍に駆け寄る。
 だがホバリングでもしない限り、この巨大お椀からは出れそうにない。でもシアンもダム・Kもそんな能力は所持していない。
 しかもこのお椀、何故か常に揺れ動くから少々酔いそうになる。幻想空間の一種なのだろうか? いや、それだったらダム・Kが乱入できるようなものなのだろうか?
 ダム・Kが「ミラリムまだー!?」という看板を出している中、復活したオ=ワンが二人の方を振り向いてこの巨大お椀について説明する。

「逃げようとしても無駄でござんす。この碗湾丸は拙者の能力による拙者の分身みたいなもの、入ったら目的地にたどり着くまで出させないでござんすよ。それが渡し守の役目でござんすからな」
「……誘拐犯の間違いだろ」
『渡し守の使い方間違ってます』

 得意げに語るオ=ワンに対し、ツッコミを入れるシアンとダム・K。
 だがどうにもこうにもできない状況下なのに変わりない。それどころかこのお椀こと椀湾丸がオ=ワンの能力だと発覚してしまった為に厄介な状態と化している。
 色々な能力があるのは知っているが、幻想空間よりもある意味性質が悪いこんな能力保持者と遭遇するなんて何と運が悪い。
 受難続きだとシアンが思う中、ダム・Kが彼女をかばうように一歩前に出る。

「目玉さん?」

 いきなりどうしたの、と言いたげなシアンに対してダム・Kは振り向くと頭を優しく撫でてあげる。
 撫で終わると優しい表情を真剣そのものに切り替え、オ=ワン目掛けて己の花びらを一斉に飛ばしていく。
 飛んでくる巨大な複数の花びらに対し、オ=ワンは背中に背負っていた刀を抜いて飛んでくる花びらを切り刻んで無効化する。
 あっさり無効化されるもののダム・Kは花びらを再生させ、戦闘態勢を崩さない。
 それを見たオ=ワンはダム・Kの目的を察して刀を向ける。

「拙者を倒し、能力解除を狙う手段に出たでござんすか」
『大国防衛隊だからね、自分』
「……実力に自信はある、か。ならばその実力、見せてもらうでござんす!!」

 そう言うとオ=ワンは両手で刀を持ち、ダム・Kの攻撃を待つ。
 ダム・Kはその誘いを見て、己の周囲に小さいながらも暗黒の球を複数出現させて浮遊したまま固定させる。
 両者の攻撃態勢が整った次の瞬間、オ=ワンは勢い良く走り出し、ダム・Kは一気に暗黒の球を放出していく。
 暗黒の球が正面から縦横無尽に襲い掛かってくるのに対し、オ=ワンはいくつか斬りながら進んでいく。
 しかし暗黒の球の方が無限に数があり、尚且つダム・Kは花びらを再びオ=ワン目掛けて飛ばしていき、彼の全身を球による殴打だけでなく切っていくなどと確実にダメージを与えていく。
 多すぎる攻撃の数にオ=ワンは全身を傷つけられていき、足を止めそうになるものの唇を噛み締めてダム・K目掛けて突進していく。
 突進してくるオ=ワンを止めようとダム・Kは飛ばしていったものも含め、暗黒の球と花びらを使って彼の四方八方から追い討ちをかけるようにダメージを与えていく。
 だがオ=ワンは足を止めず、ボロボロになりながらもダム・Kの懐まで入り込むと一文字切りを行った。

「切捨てごめん!」

 直後ダム・Kが前へと倒れこみ、オ=ワンに支えられる。同時に暗黒の球と花びらが消え去る。
 倒れたダム・Kを見て、死んでしまったのかとシアンは思ってしまい、体が震え出す。
 その様子を見たオ=ワンは刀の面をシアンに向けながら話しかける。

「この刀では人を殺す事は出来ぬでござんす」

 その刀は刃と峰は逆になっている逆刃刀であった。
 漫画でしかないだろうその存在を目にし、シアンは思わず目を丸くしてしまうもののこれのおかげでダム・Kが死んでないと分かり、ホッと一息をつく。
 だがオ=ワンは気を失ったダム・Kを寝かせると刀の先を彼の閉じた目玉に当たるスレスレで止める。
 それを見たシアンが息を呑み、オ=ワンを凝視する。
 オ=ワンはそのままの体勢でシアンに重々しい表情を向け、彼女に脅迫めいた取引を口にする。

「歌姫殿、この者の命は貴殿にかかっているでござんす。歌姫殿が拙者等と共に来ればこの男はこれ以上傷つけんでござんす。だが断るようであれば――この椀湾丸を血で汚す事になるでござんす」

 その言葉に、拒否権なんて存在しなかった。
 何がなんだか分からない。ただ分かるのはここで拒否してしまったら、目の前の命は消えてしまうということ。
 サザンクロスタウンから様々な事がありすぎて心も頭もまだ整理し切れていないのに、運命というものはシアンを傷つけたくて仕方が無いようだ。彼女がどんなに泣き叫んでもそれすらも快感としているようにも見える。
 そう思うと不安や恐怖から体が震えてくる。だけど怯えるだけでは何も動かないのは分かっている。痛感している。
 今、この状況をどうにかできるのは、ダム・Kの命を救えるのは自分の命しかないのだから。
 シアンは涙が出そうになるのも必死に堪え、はいと答えようとしたその時だった。 

「それが武士のやる事かい?」

 椀湾丸の上から青年の声が聞こえてきたのは。
 シアンとオ=ワンがその声を聞いて顔を上げようとしたその時、バサッと羽ばたく音と共に椀湾丸の中へと一人のカービィが上空から入ってくる。
 二人と丁度向かい合う位置に降り立った彼は軽い怒りの表情を顔に浮かべながらオ=ワンに言い切った。

「僕からすればその行為、どっからどう見ても悪党にしか見えないよ」

 降り立ったのは背中に白き翼を生やし、頭から細長い耳を生やした不思議な青い男の子だった。
 シアンにはその姿が地に降り立った神の化身と思わせるぐらい、神々しく感じられた。
 オ=ワンは普通のカービィとは明らかに何かが違う男の子に警戒しながらも、そのままの体勢で睨みつける。

「……貴殿、何者でござんすか?」

 威圧感のある睨みに男の子は全く怯まず、強い口調で言い返す。

「僕はクゥ。ただの通りすがりの旅人だよ」

 そう言って彼は己の足元に魔法陣を展開させた。
 すると展開された魔法陣から一際激しい光が発生し、椀湾丸全体を包み込む。

「!?」

 あまりの眩しさに目を瞑ってしまうオ=ワンとシアン。
 光は止む気配が無く、輝き続けていく。それこそこの中にいる全員の視界を全て奪ってしまうぐらいに。
 だけれどもクゥだけは目を開いたまま、ただ平然と別れの言葉を残す。

「ばいばい」

 次の瞬間、光が一気に消滅した。
 光が消えたもののまだ眩しさが残っているオ=ワンは目をほんの少しだけしか開けられなかった。
 そこで目にしたのは、自分以外の三人がこの場から消えてしまった光景だった。

 ■ □ ■

 海辺にたどり着いたミルエとケイトが目にしたものは砂浜に浮かび上がる水色の魔法陣だった。
 二人はすぐさま水色の魔法陣まで近づく。
 すると水色の魔法陣はタイミングを合わせたかのように輝き出す。輝く陣から粒子のような光が無数に溢れ出し、光はそれぞれ三つの球体を作り上げていく。
 一つは細長い耳と翼を生やした者。一つは狐の耳と大きな尻尾を生やした者。一つは体に大きな花びらを生やした巨大な目玉をもつ者。最初は色が無かったもののすぐに粒子によってそれぞれ彩られていき、魔法陣の光の粒子が消える頃には三人共にしっかりとした姿でそこにいた。
 魔法陣そのものの輝きが失うと共に、ゆっくりと魔法の発動者……細長い耳と翼を持つ者クゥは顔を上げる。
 その傍ではシアンと目を覚ましたダム・Kがいきなり転移してしまった事に驚きを隠せず、キョロキョロと周りを見渡している。

「……あ、ありゃ?! こ、今度は何!? え、え、ちょっとー!?」
「!? !? !!?」

 困惑してる二人を他所にクゥは戦闘態勢のミルエとケイトに顔を向ける。
 ミルエは拳銃、ケイトはクナイを何時でも投げられる状態のまま警戒を解かずに尋ねる。

「……あなた、何者?」
「彼女の誘拐犯かい?」

 クゥはその問いに対して頭を左右に振ると、柔和な笑みを浮かべて丁寧に挨拶する。



「はじめまして。否定の魔女の宿敵に選ばれたナグサ君に会いに来ました」





  • 最終更新:2014-05-29 18:28:15