第三十七話「ナグサ・イン・フォギーワールド」


 先が見えない霧の中、ナグサは立っていた。
 どうして自分はここにいるのだろうか。確か自分は部屋での会議を終わらせた後、現状をメモしようとした時に謎の旅人クゥにいきなり話しかけられたと思ったら意識を失ってしまった。
 そして目が覚ますとこんな霧だらけの空間に己は立っていた。

「何だここ? クゥの幻想空間か……?」

 辺りを見渡してみるものの、全体に深い灰色の霧が広がっていて周りがどうなっているのかさえよく分からない。幸いな事にぼんやりとした太陽とも月とも違う不思議な明かりが空にあるのか暗闇ではない。
 もちろん三日月島にそんな場所は存在しないし、誰かが発動させた幻想空間と考えるのが自然なのだろう。
 しかし自分をこんなとこに迷い込ませるメリットなんて一体どこにあるのだろうか?
 クゥはナグサに会いに来たと行っていたけれどこんな事をする目的は一体何処にある?
 疑問がグルグルと回るけど、何の手かがりも無いのでナグサはため息をつくと仕方なくこの霧の中を歩こうと一歩踏み出る。
 その時、正面からぺたぺたと足音が聞こえてきた。ゆっくりだけど、確実にこちらに近づいてくる足音が。
 一体何が出るのだとナグサは警戒する。
 すぐに足音の主はナグサの目の前へとやってきた。特徴的なロングマフラーを身につけた反乱軍側の骨男とは違った物静かさを持つ男だ。
 ナグサは警戒を解かず、男に問う。

「何者だ?」
「私は、フォギー。あなたに、尋ねたくて、きました」
「僕に?」

 尋ねるって一体何を尋ねるのだろうか?
 丁寧口調でゆっくりゆっくりと話していくせいなのか、それとも元々そういう声なのか、口調が非常にエロい。声も低く、本当に刺激的な為にクラクラしそうだ。女性だったら違う意味で瀕死状態になってる。
 といっても当のナグサはそっち系の趣味は持っていない為、声がエロいなーって思うぐらいだが。
 ナグサの疑問に頷き、フォギーは特徴的なゆっくりとした口調で尋ねだす。

「そう。ナグサさん、あなたに、問います。あなたは、何故、ここにいる?」
「は?」
「何故?」
「……サザンクロスタウンから脱出したから」
「何故?」
「何故って、サザンクロスタウンがダイダロスまみれになって危険すぎるから」
「何故?」

 繰り返し「何故」と言い続けるフォギーに対し、ナグサは何かがおかしいと察する。
 普通にいる理由を尋ねてくるだけならこれで十分だし、こんな幻想空間に閉じ込める理由も無い。
 それなら可能性はある程度出てくる。敵陣の罠か、フォギー個人の領域に捕まったのか、それとも――もっと本質的な事を問おうとしているのか。
 こんな状況下なら、一番可能性が高いのは最後の本質。
 それならばクゥがナグサに会いに来たという目的もこれだということが、理解できる。
 何を問いたいのかはまだ分からないけれど、今は霧という名を持つ男に答えなければ進みはしない。

「何故?」

 思考するナグサに対し、急かすように再度問いかけてくるフォギー。
 ナグサは戸惑わず、あっさりと答える。

「否定の魔女がダイダロスの軍勢を発生させ、命の危険が生じたから」
「何故、否定の魔女トレヴィーニ・フリーア・フェイルモーガンは蘇った?」

 無表情だったフォギーの目がうっすらと細くなる。
 その姿さえもどこか妖美を帯びていたけれど、ナグサは惑わされずに冷静に推測できた。
 この男が問いたい本質が、始まりの部分だという事に。
 今更何を知りたいんだろうか。その始まりに何かがあるというのだろうか。……ならばそれを引きずり出してやる。

「僕が蘇らせてしまったから」
「何故?」
「馬鹿げた好奇心で魔女を封印した魔道書を開いてしまったから」
「何故?」
「魔道書の本来の姿を見たくなったから」
「何故?」
「ミルエちゃんに落書きノートに見えると言ったら大笑いされたのが切欠」
「何故?」
「魔道書には魔法がかかっていたんだよ。多分個人個人によって興味の無い本に変化するんじゃないかな?」
「何故?」
「否定の魔女を復活させないようにする為だろ」
「何故?」
「この世界が再び戦乱に満ちない為」
「何故、否定の魔女が、蘇ると、世界は、戦乱に満ちる?」

 ここで漸くフォギーからの質問が出てきた。
 それを聞いてナグサは瞬時に察する。問いたいのは何故否定の魔女が蘇ったのかという事実よりも、否定の魔女そのものに対する事なのかと。
 しかし何故分かりきった事を尋ねてくる……?

「否定の魔女が人々に戦いを挑むか、その戦いを混乱に渦巻かせるよう操作するからだ」
「それは、人も同じ」

 そこでフォギーは初めて「何故」をつけず、言い返してきた。
 この答えに納得していないのか、それとも見当違いな事を尋ねたのか。

「……否定の魔女の力は凄まじい。彼女が望めばありとあらゆる事象が否定されるし、その魔力だけでも国をたくさん滅ぼせてしまう。現に世界大戦がそうだった」
「経過はそうでした。ならば何故、十数年前、否定の魔女は、蘇ったのですか?」
「!!」

 その質問を聞き、ナグサは目を丸くした。
 そうだった。否定の魔女は世界大戦以前から封印されていたんだ。八百年前のスカイピアに関する歴史で出てきた滅びの魔女インヴェルトと同一人物ならば、スカイピアが海底神殿になった時に共に封印された筈。
 それなのに何故世界大戦を引き起こせた? 人々の記憶に強く強くこびりついている? そんなもの、理由は簡単だ。

「誰かが否定の魔女を蘇らせたから」

 かつての世界大戦<物語>を引き起こす切欠である否定の魔女を蘇らせたのも、自分と同じ人だからだ。
 でも一体誰が否定の魔女を蘇らせた……?
 世界大戦当時では否定の魔女という存在はダイダロスの軍勢による夜明国崩壊事件で大きく響き渡り、有名となった。
 だがその事件以前では否定の魔女はほとんど形も影も無かったし、海底神殿と共に封じられた滅びの魔女インヴェルトと同一人物とは誰も結び付けていなかった。
 恐らく蘇らせた誰かは滅びの魔女を目覚めさせようとしたのだろうが、
 誰かが魔女を蘇らせたとすれば――どういう理由で?

「何故、その者は、どういう理由で、否定の魔女を、蘇らせたのですか?」

 ナグサの心でも読んだのか、フォギーはナグサの中に生まれた疑問をそっくりそのまま尋ねてきた。
 その質問を聞いてナグサは頭を悩ませるものの、頭をめいいっぱい回転させて思考する。
 魔女を蘇らせる理由なんて普通は無い筈だ。だけど十数年前は世界大戦とまでは行かなかったものの、領土を取り合う戦が全体的に行われていた。
 といっても誰もが一歩引いていた。世界大戦と呼ばれる戦いという大博打に勝てるかどうか、まだ勝算が無かったから。
 だけどディミヌ・エンドが首謀者である機械反乱事件が切欠となって世界は大戦を始めた。今思うとこの時点で否定の魔女は蘇っていたのだろう。
 強すぎる力を持った魔女を蘇らせれば、こんな結果になるのは分かっていたのでは?
 そう思うけれどもナグサはすぐに考えを切り替える。現代の考え方ではなく、世界大戦直前の立場になっての考え方で。
 十数年前、誰もが戦争という恐ろしい剣の真の威力を知らなかったとすれば? 誰もが戦争で失っていく命の量がどのぐらいなのか知らなかったとすれば? 本当はどの国も戦争を望んでいたとすれば?
 ここまで考え、ナグサは恐ろしい答えにたどり着いた。

「……戦争を望んでいたから、だと思う」
「何故?」
「そこまでは分からない。だけど一国を滅ぼせる力を持った魔女を蘇らせるなら、そう考えるのが自然だ」

 十数年前、否定の魔女を蘇らせたのは大きな戦争を望んでいた人物しかいない。それがナグサの答え。
 そうでなければ、誰が好き好んで擬人化した災厄を蘇らせるというのだ?
 戦争を引き起こすという自分勝手にも程がある理由でなければ、世界を滅びに導く魔女なんて蘇らせるわけなんて無い。
 その結果、数十万もの命を滅ぼす結果になるとも知らずに。
 世界大戦を引き起こした奴なんて極刑になっているだろうとナグサが思う中、フォギーは再び尋ねてくる。

「何故、否定の魔女はそんな事しかしないのですか?」

 ナグサはそれを聞いて一瞬どう答えればいいかわからなくなるものの、すぐに落ち着きを取り戻す。
 根っから戦争を望んでいるから? いいや、それはきっと違う。
 情報交換の際、否定の魔女個人の目的は戦争とは違う可能性があるのは聞いた。人以上に人を愛している、という事も聞いた。そして己が否定の魔女を滅ぼすといった時も、本人はそれを否定せずに肯定していた。
 この事と「メルヘンチックな自己満足」から繋ぎ合わされる答えは――とても馬鹿げたものだった。

「……御伽噺の悪役のように、滅びたいからだよ」

 つまり否定の魔女トレヴィーニ・フリーア・フェイルモーガンは、ただの死にたがり。
 だけど自分の手で死ぬ事は出来ない。だから悪役になる。御伽噺のように勇者様か王子様に殺される悪い魔女になって、死のうとしている。
 けれどもまだ彼女は死んでいない。だから彼女は戦争を引き起こし、己がラスボスとなる。
 それはきっとトレヴィーニが滅びるまで輪廻のように続いているのだろう。

「何故、滅びたがっているのですか?」
「そこまでは分からないし、この答えも推測でしかない。ただね、彼女はそれを望んでいるんじゃないかなと思って」
「何故、そう思えるのですか?」
「彼女が僕に滅ぼしてみせろと言ったから」

 これも推測でしかない。だけどナグサにはこれが全ての答えのようにも思えてきた。
 その答えにフォギーは「何故」と問わず、代わりに本質的な部分を問う。

「あなたは、トレヴィーニを、滅ぼせるのですか?」

 その冷たい視線は、己の心を射抜くぐらいの鋭さを持っていてナグサの決意を揺るがされそうになる。
 否定の魔女トレヴィーニ・フリーア・フェイルモーガンの実力は誰もが知っている。ナグサも忘れているわけじゃない。
 ナグサ個人で倒せるような相手なんかじゃない。きっと大国が一丸となっても、勝つか負けるか分からないのだろう。
 だけどもナグサは……やらなければならない。
 死にたがりの魔女が死ぬ為の手段は誰かに殺される以外存在しない。だから己に刃を向ける主人公と戦い、滅びる事を他ならぬ魔女自身が望んでいる。
 その主人公に選ばれたナグサは、死にたがりのトレヴィーニの心臓を貫かねばならない。
 それがどれほど恐ろしいことなのかは良く知っている。だけどもやらなければ意味が無い事も知っている。
 何故なら、ナグサはもう一歩も後には引けないし、引く気も無いからだ。
 だからナグサは強い決意を乗せて、フォギーに頷いた。

「滅ぼすよ」

 無数の命を奪い、ナグサの大切な存在も奪った否定の魔女を許してはならない。
 トレヴィーニが死にたがりであろうとも、彼女が幾万の命を奪った魔女である事に代わりは無い。だからこそ終止符を打つ。
 どんなに力の差があろうとも、ナグサはトレヴィーニを滅ぼすという決意を揺るがさなかった。
 それを聞いたフォギーはためらいをもたらす視線と共に、呟く。

「後悔しませんね?」

 ナグサは深く頷いた。
 すると灰色の霧が深まっていき、フォギーの姿も霧と同化するように見えなくなっていく。消えていくフォギーを黙って見送っていくナグサの姿もまた、霧と同化して見えなくなっていく。
 灰色の霧が空間全体を覆いつくし、何処に何があるのかさえも見えなくなる分からなくなる。
 その次の瞬間、ナグサを中心にして灰色の霧が払い飛ばされるかのように消失した。

 霧が晴れた場所、そこは己の部屋だった。
 当然フォギーの姿は無く、代わりにベッドに腰掛けて笑いかけてくるクゥの姿があった。

「おかえり、運命の打開者」

 なにやらまたも二つ名がつけられているようだけど、ナグサはスルー。

「……ただいま。さっきのフォギーっていうのは君が出したのかい?」
「半分当たり。彼って色んなトコを動き回ってて、連れてくるのに苦労したんだ」
「そう。それで僕に対する用事は終わりかい?」
「あー、まだ二つほど残ってる」
「……すぐ終わらせてね」

 手間がかかるのはもうごめんだ、と言わんばかりのナグサ。
 クゥはどこからともなくかなり分厚い茶表紙の本を取り出し、ナグサに手渡しながら説明する。

「一つはこの魔道書を君に渡す事。否定の魔女を本当の意味で滅ぼせる可能性がある者に祝福アレ、ってレガナ様がね」
「魔道書にはろくな思い出が無いんだけどなぁ」

 己のミスでトレヴィーニが蘇った事を思い出し、若干ブルーになりながらもナグサは魔道書を観察する。
 それなりに重量のある魔道書で、表紙にもびっしりと銀色の細かい紋様が描かれていて見ているだけで頭が痛くなりそうだ。多分ミルエだったらさっさと売り飛ばしてる。
 パラパラとめくっていると各ページに呪文の詠唱やその効果が載っていたり、コピー能力の意外な使用方法などと一般的な事からマニアックすぎるものまで様々なものが描かれている。
 これは予想以上の強い武器になりそうだとナグサは一字一句見逃さないように黙読していく。
 そんなナグサに対し、クゥはまだ話が終わってないと言わんばかりに話しかける。

「その魔道書は魔法が使えるだけじゃなく、ミックスコピー能力とかシャボンコピーとかも使えるようになる秘術も書かれてある。何たって神様直伝のだからね」
「あ、えと、世界大戦の時には渡さなかったの?」
「んー……。そんな力がいるような人物でもなかったし、それにあげるなーってカーベル様にきつく言われてね」

 話しかけられて慌てて顔を上げるナグサの質問に、クゥは世界大戦当時の事を思い出しながら答える。
 それを聞いたナグサは世界大戦時のトレヴィーニにとっての「主人公」がマナ氏であった事を思い出し、カーベルが拒む理由にも納得する。サディスティック大魔王にこんなものを渡したらもっと悲惨な事になる。
 何か違う部分に納得しているナグサを他所にクゥは次の目的について話し出す。

「でもって次の用事は君をタワー・クロックに案内する事」
「タワー・クロック!?」
「そっ、北の都タワー・クロック。イクステオ様もレガナ様も君に会いたがっているし、ドラグーンパーツもお二人が持っているんだ」
「……マジで?」
「うん、マジ。否定の魔女に喧嘩を堂々と売ったのを気に入っちゃったみたいなんだよ、二人とも」

 それ何で知ってんだよ、おい!?
 そんなツッコミ精神が生まれたけれど、どうにか飲み込んでタワー・クロックの重なった部分について疑問を抱く。
 トレヴィーニはタワー・クロックにクウィンスを送り込むと言っていた。クゥはイクステオとレガナの両名がタワー・クロックでナグサを待っていると言っている。
 この偶然は一体何なのだろうか? トレヴィーニはナグサがタワー・クロックに行く事を予知していたのだろうか?
 どっちにしろ好都合ではある。サザンクロスタウン脱出直前でトレヴィーニからかけられた否定の件もあるし、この偶然に乗っかってやろう。
 ナグサは考えを纏め終えるとクゥに尋ねる。

「一個、質問する。……時の神様、いる?」
「いるよ。レガナ=ノキト様が時空を司っているし、タワー・クロックはそういう事が一番やりやすいところだよ」
「そう、ありがとう」

 それを聞いたナグサは内心ホッとしながらも、クウィンスを救う手段の一つが見つかった気がした。
 トレヴィーニに手助けされている形なのは気に食わないけれど、今は確実に救い出すのが先決だ。ウェザーのように目の前で殺されてしまうような事態にはさせてはならない。
 その為には大国に帰ったら真っ先にあの人に会い、話をつけなければならない。
 ナグサが新たなる目的地タワー・クロックに対しての決意を強める中、クゥがふと思い出したように話し出す。

「あぁ、そうだ。今の内に伝えておこう。君をフォギーに会わせている間、彼等に尋ねたんだ。君についていくのかと」

 ナグサはそれを聞いて驚愕する。魔道書を落としかけるものの慌てて拾い上げる。
 クゥはそんなナグサを見て微笑みながらも、その答えについて話し出す。

「全員イエスって答えたよ。それぞれ目的が責任を取るとか、敵討ちだとか、真実を知りたいとか、生き残りたいとか、みーんなバラバラだったけどね。あの狐の女の子も怖がってはいたけど、カーベル様と対面して何かを知ったみたいだし」
「カーベル、こっち来てたの!?」
「そりゃそうだよ。というか何時間こっちにいなかったと思ってるの?」
「え?」
「四時間近くはフォギーの世界にいたんだよ、君」

 四時間。あの短い間でそれだけの時が立っていたのか。
 部屋の中にある壁時計を見てみると、既に深夜。シアン誘拐やら会議やらで時間がたっているのは分かっていたけど、それにプラスして四時間だから深夜になっているのもおかしくはなかった。
 幻想空間次第では時間の流れが変わることも知っていたが、ここまで激しく違うのは初めての体験だ。
 クゥは話を続けていく。

「でもって幻想空間になってる部屋には普通の人は入れないでしょ?」
「うん。ってそれなら何で君はいたんだ」
「それはどうでもいいこと。それよりも三人とも入り口で待ってるから、迎えにいってあげたら?」

 それを聞いてナグサはすぐにどういう事か察し、慌てて部屋の扉を開けて廊下を見渡す。
 三人はすぐに見つかった。
 幻想空間となっていた部屋のすぐ隣でミルエとツギ・まちが互いに擦り寄ってすーすー眠っていた。ツギ・まちの頭の上ではちるが寝転がっている。
 そんな三人を見て、ナグサは少し呆れるけれどすぐに小さな微笑を浮かべるとクゥを呼んで彼と共に三人を部屋の中へと運び出す。

 ■ □ ■

 少し時を戻し、ナグサがフォギーと問答を続けている最中。
 シアンの部屋ではベッドに座り込んだシアンと椅子に座っているカーベルが話を終えていた。

「それが、シャラとあなたの歌の真実……」

 カーベルから聞かされた魂の歌の真実を聞き、唖然とするシアン。
 自分が考えていた以上に大きな大きな力を持っており、それを唯一歌えるのが自分だけだという事があまりにも衝撃的で言葉が見つからなかった。
 カーベルは両手を組み、シアンをしっかりと見据えながら尋ねる。

「そうだ。これを聞いて、あなたはどうする?」
「……クゥさんに尋ねられた時にも答えたじゃん。一緒に行くって」
「自分のせいで目の前で誰かが死ぬ事になりたくないから、って答えていたな。本当にそれだけか?」
「えと、それじゃ聞いていい?」
「何だ?」

 中々心の強い子だと思いながら、カーベルは話を聞こうとシアンを見る。
 シアンは少し考えてから心の中で引っかかっている事を尋ねる。

「……どうしてこの歌は未完成なの?」

 その言葉を聞いて、カーベルの表情が曇った。





 

  • 最終更新:2014-05-29 18:29:33

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