プロローグ「図書館内部銃撃事件」

始まりは図書館と少女から



 ナグサは目の前の光景に唖然とした。
 弾痕だらけの壁。多くの穴が開いて倒れている本棚。床に無数に散らばった本。完全に割れてしまい、見る影が無い窓。
 床をちらりと見てみるとこっちも弾痕だらけで、ところどころに薬莢が落ちている。しかも見たところ二十は確実に超えている。
 そして最大の異様な風景はこんな状態でも普通に本を片付けている司書と、唯一形は無事だったカウンター(当然弾痕だらけでへこみまくってる)の上で絵本を呼んでいる見知らぬカービィがいる事。

「……何コレ」

 全く持って意味が分からないんですが。
 あまりにも異様すぎる図書館の光景にナグサは頭が追いつけず、眩暈を感じた。
 何で図書館が戦争の跡みたいになってるんだ。明らかに銃撃戦があっただろこれ。平然と本を片付けないでくれよ頼むから。ってかそこのカービィ誰だよ。あーもう誰か説明してくれ。
 頭の中でグルグルと疑問が出てくる。言葉にしないのは意味が分からなすぎて、どれから聞けばいいのかサッパリ分からないから。
 ナグサの存在に気づいたのか、絵本を読んでいたカービィが顔を上げて能天気な声を出す。

「あれ? 誰かいるよー、クーちゃん」

 クーちゃん!? あの司書をクーちゃん呼ばわりって勇気あるな、おい!?
 とんでもない呼び名を聞いて、ナグサは思わず心の中でツッコミを入れた。
 その問題のクーちゃん呼ばわりされた司書クウィンスはというとナグサに気づき、本を片付けるのを止めると平然とした様子でナグサの方に体を向ける。

「ナグサ君、遅かったですね。どういたしましたか?」
「僕の遅れた事情よりもまず先にこの図書館の悲惨且つどうしようもない状況について説明してください。何なんですかこれは。銃撃戦でも起きたんですか。泥棒でも出たんですか」

 何時もの調子で話しかけてくるクウィンスに対し、ナグサは怒涛の早口で攻め立てる。
 平然とするにはこの状況はあまりにもおかしすぎるし、意味が分からないので説明が一秒でも早くほしい。理解できるように丁寧にだ。
 だがクウィンスはずれた眼鏡を直しながら頷いただけだった。

「えぇ、その通りです」
「……え?」
「ですから、泥棒が出て銃撃戦が起きたんです。ちなみに泥棒は絵本読んでる彼女です」

 そう言ってクウィンスは絵本を読んでいるカービィを顎で指す。
 顎で指されたカービィはというと、無邪気な笑顔を浮かべて手をナグサに振って挨拶する。

「ミルエだよ! ミルエ・コンスピリト!」

 ミルエ、そう名乗る濃い桃色のカービィはゴーグルがついた飛行帽(なのか?)を被ったウサギを連想させる特徴的な長い耳を持っている。頬にはハートの刺青がある。
 こんな異様な状態でなければ可愛い女の子だなと普通に思えた。しかし今はそれどころじゃない。

「ミルエちゃんだっけ? 君が……」
「ねぇねぇ! 君は何て言うの? クーちゃんのお友達?」
「え? あぁ、僕はナグサ。この図書館には良く来てる……ってちがああああああう!!」

 話を最後まで聞かず、子供と同じようにたずねてくるミルエに思わずつられてしまうナグサ。すぐさま我に戻り、思い切りミルエを指差すと先ほどと同じ、いや、それ以上の怒涛の勢いで質問を並べていく。

「君、さっき泥棒って言われてなかった!? この惨劇の原因君なの!? 何でこんな事起こしたの!? というかクウィンス、何でこんなに冷静なの!? 分かりやすく誰か説明してくれー!!」
「落ち着きなさい、ナグサ君」

 混乱して、半分我を忘れているナグサの頭にクウィンスは本で思いっきり叩いた。
 鈍い音が響くと共にナグサはいきなりの鈍い痛みに思わず小さな悲鳴を上げる。

「いだっ!?」
「状況に関しては今から簡単に説明します。だから落ち着きなさい。キャラ壊れてますよ」
「……この状況になってもキャラが壊れていないクウィンスとミルエちゃんの方が凄いと思うんだけど」

 落ち着きすぎているクウィンスの言動を見て、ナグサは叩かれた頭をさすりながら返す。クウィンスはそれをあっさりスルーすると唐突にこんな事を口にした。

「『否定の魔女』を知っていますか?」
「え?」

 唐突に出てきた単語にナグサは思わず間抜けな声を出してしまう。
 『否定の魔女』は世界大戦を生き抜いた者にとっては常識過ぎる言葉。どうして今このタイミングでこのタイミングで出てくるのだろう?

「だれだれー? ナッくんは知ってるのー?」

 ミルエは純粋に分からないのか、クウィンスとナグサの傍に駆け寄って尋ねてくるだけ。
 クウィンスは喋る気が無いらしく黙ってナグサを見ている。「早く説明しなさい」と彼女の目が言っており、ナグサは渋々『否定の魔女』について説明する。

「六年前に終結した世界大戦の黒幕であり、長い長い戦争を続けさせ、人々を苦しめ続けてきたこの大国の黒歴史と呼ばれるほどの危険人物。確か皇帝陛下率いる軍勢によって人知れぬ地に封印されていて、今は厳重な警備が施されていて、誰も近づけない状態になっている。これでいい?」

 誰でも知ってる程度の簡単な説明をし、ナグサはクウィンスに少し疲れた顔で確かめる。
 クウィンスはこくんと頷き、己も続けて説明する。

「その通り。何の目的かは知らないけれど、この世を災厄と滅亡に導こうとした魔王と言っても過言ではない絶対なる力を秘めた魔女。それが『否定の魔女』です」
「おぉー! とっても怖いぞー!!」
「いや、これ常識だから」

 ミルエが純粋に感心するのを見てナグサは軽くツッコミを入れる。
 だがいきなり『否定の魔女』という話につながるのは一体どういうことなのだろうか?
 ナグサは小さくため息をつき、クウィンスに顔を向ける。

「で? 『否定の魔女』とこの地獄絵図に何の関係があるの?」

 尋ねられたクウィンスは先ほどとは打って変わって、ナグサも見た事が無い真剣な顔になって答えた。

「実はこの埋もれた本の中に『否定の魔女』を復活させる方法が唯一書かれた魔道書があるんです」
「……え?」

 とんでもない爆弾発言にナグサは己の耳を疑った。
 世界大戦時に封印された『否定の魔女』を復活させる魔道書が……この図書館にある?
 そんな馬鹿な。自分はずっと前からこの図書館に通っていて、ある程度の本は網羅しているんだ。そんな危険すぎる本があれば覚えている。
 困惑していくナグサを見て察したのか、クウィンスは左右に体を振る。

「魔道書は図書館にあったわけじゃないんです。そこにいるミルエ・コンスピリトがここに持ち込んできたんです」
「何だって!?」

 ナグサは思わぬ事実に驚きの声を上げ、咄嗟にミルエに振り返る。ミルエは話についていけてないのか、ただナグサとクウィンスを交互に見ているだけ。
 少なくともナグサにはミルエがそんな危険な代物を盗んできたなんて思えなかった。だが、ここまでのミルエとのやりとりをしていれば簡単に答えは出てきた。

「……もしかして、そんなに大事な物だと知らずにミルエちゃんは盗んできたんですか?」
「多分そうでしょう。復活の魔道書は大国の本城に誰にも触れられないよう保管されている筈なんですが、何故か彼女は保持していました。ですが理由を尋ねても「人が持っていたのを盗んだ」の一点張り。仕方ないので力ずくで聞き出す事にしました。あの時は魔道書を見てパニックになっていましたので、今思うと良い判断では無かったですね」
「で、見ての通りの現状になったと?」
「はい。彼女も私と同じ銃器使いだとは思いませんでした。予想以上に激しい銃撃戦が行われ、図書館は見るも無残な姿になってしまいました。しかも戦闘の最中に彼女が魔道書を落としてしまったので、仕方なく中断して二人で探しているんです。実質私一人ですが」

 そこまで聞けば事件の概要がさすがに分かる。
 何かしらの事情でこの図書館にやってきたミルエ、当然例の魔道書を持ってだ。クウィンスは魔道書を見て大いに戸惑っただろう。何せ世界を滅ぼそうとした『否定の魔女』を復活させる魔道書がいきなり出現したのだから。
 だけど冷静なクウィンスはすぐに我を取り戻し、ミルエに何故魔道書を持っているのか尋ねた。だがミルエは「盗んだ」と答えてしまったのだ。魔道書が重大なモノであり、ここに合ってはいけないモノだという事実がクウィンスを焦らせたのか、それを知った途端彼女らしくなく話を強引に進める為に拳銃を向けた。
 そのまま流れるようにミルエとクウィンスによる図書館内部での銃撃戦が行われた。しかしその最中に肝心の魔道書が消えてしまい、二人は戦闘を中断して(恐らくクウィンスがミルエに説明したのだろう)探す事にした。
 その真っ最中に自分ナグサがやってきた。
 多少食い違いはあるかもしれないが、クウィンスの話を大体整理すればこんなもんだろう。ナグサは内心でそう結論付けるとクウィンスに尋ねる。

「まぁ、ある程度の事情は分かったよ。それで僕はどうしたらいい?」
「あ、手伝ってくれるのですか?」
「さすがにここまで聞いちゃったらね」

 意外そうなクウィンスに対し、ナグサは小さく苦笑しながら頷く。
 クウィンスはそれを見ると顎に手を当てて少し考え込むけれど、すぐに纏まったのかナグサに顔を向けてお願いする。

「……そうですね。では手伝ってください。それと時間が遅くなったら、彼女を泊めてください」
「…………は? ちょっと待って。前半はともかく、後半はどういうこと?」
「そのままの意味です。この町には宿などありませんし、一人暮らししているのはあなたの家だけですから丁度良いでしょう?」
「いやいやいやいや、何でそうなるの? 意味が分からないんですけど?」

 あまりに突拍子の無いお願いにナグサは理解する事が出来ず、呆然とする。
 クウィンスはその様子に笑う事も呆れる事もせず、ずれた眼鏡を直しながら普通に説明する。

「彼女は『否定の魔女』を復活させる魔道書を許可無く保持していました。この事実に関して大国に連絡しなければいけません。ですがその魔道書を見つけ出すには少し時間がかかりますし、その間に彼女がいなくならないという保障はありません。大国からの使者もこの町に来るまで最低でも一日はかかります。ここまで言えば私の言いたい事が分かりますね?」
「そりゃ分かるけど……」
「手伝うって言ったのはナグサ君ですよ。男に二言は無いという言葉があるのをお忘れで?」

 これは何を言っても無駄だ。
 ナグサはクウィンスの有無も言わさぬ畳み掛けるような正論に折れ、深いため息をついて仕方なく頷いた。

 ■ □ ■

魔道書の行方



 その後、長い間本を片付けたりしながら魔道書を捜索したが結局見つからなかった。
 それは当然の事だろう。ほぼ全ての本が図書館の床全体に散らばっているんだ。半日程度ではたった二人(ミルエは論外)では片付けきれないし、魔道書を見つけ出す事も不可能である。
 日も暮れてきた事もあり、後の事はクウィンスに任せてナグサはミルエと共に自宅に帰ることにした。明日手伝いに行けばいいのだと思いながら。

 で、自宅の前についたナグサは空いた口が塞がらなかった。

 その理由は簡単だ。自宅の前にまたも見知らぬカービィが突っ立っているのだから。しかもただのカービィではない。
 全身継ぎ目だらけで、その間から綿が出ていたり、挙句の果てには棒キャンディもどき(見るからに布製だ)が出ているカービィ。一言で例えるならば「不恰好なぬいぐるみ」だ。
 ナグサが呆然とする隣でミルエは明るい笑顔で見知らぬカービィに手を振って声をかける。

「あ、まっちん! おとまりする場所言ってないのに良く分かるねー!」
「――」
「え? ミルエの行くとこは分かる? おぉ、凄いぞまっちん!」
「言ってる事分かるんかい!!」

 一言も言わずにこちらに向いただけの“まっちん”とやらと平然と話すミルエに対し、ナグサは素早くツッコミを入れた。
 すぐさま我に返り、ナグサはミルエにたずねる。

「ってこの人ミルエちゃんの知り合いなの?」
「そっ! 一緒にぼーけんしているまっちんことツギ・まち!」

 元気良く紹介するミルエ。まっちんことツギ・まちはミルエに紹介されてちょっと照れているのか、顔がちょっと赤くなっているが、そのままペコリとナグサにお辞儀する。
 ナグサはそれにつられて軽く挨拶しながらお辞儀する。

「あ、どうも」
「ナッくん丁寧だねー」
「君が能天気すぎるだけだよ。とりあえず家に上がって。聞きたい事は山ほどあるから」

 感心するミルエを軽く流しながら、ナグサは二人に家に上がるように勧めた。
 二人はナグサの言うとおり、ナグサの自宅に入る。ナグサは最後に入り、鍵を閉めると二人を居間に案内する。
 居間につき、ナグサはミルエとツギ・まちを適当に座らせると向かい合う位置に座って尋ねる。

「さてと、どうして魔道書を盗んだのか聞いていい?」

 クウィンスが聞きそびれた何よりも重大且つ本題とも言えるソレに対し、ミルエは普通に答える。

「ミルエは高いモノだと思って知らないカービィさんから盗んだの」
「知らないカービィ? その人の特徴覚えてる?」
「うん! 紫色でね、背中にちょうちょみたいな羽が生えてるの!」

 蝶に類似した羽を持つ紫色のカービィ。ナグサからすれば見た事も聞いた事も無いカービィだが、カービィの生態系に関してツッコミを入れたら負けだ。

「その人が渡したの? それとも奪ったの?」
「奪い取りましたー!」
「!」

 笑顔で元気良く答えるミルエの隣で、ツギ・まちも笑って頷く。

「奪い取ったって、どうやって?」
「戦ったよ! あのカービィさん、粉が強烈だったけどまっちんのおかげでどうにかなったよ!」
「♪」

 粉が強烈の意味が良く分からないけど、とにかくミルエとツギ・まちは何らかの事情で魔道書を保持していたカービィから戦って奪い取った。そう認識すればいいのだろう。
 ナグサはそう結論付け、魔道書強奪理由を簡単に纏めてみる。

「つまりそのカービィが持っている魔道書が高く売れそうだから奪ったと?」
「そーなの! でも図書館で落としちゃった」
「~!」
「きゃー、まっちん怒らないでー!!」

 魔道書落とした発言に軽く怒ったツギ・まちにぽかぽか叩かれ、ミルエはちっちゃな悲鳴を上げる。本気で抵抗していないところを見ると全く痛みが無いのだろう。
 その後の事は知っているし、これ以上聞く事は無いだろう。ナグサは自分に納得させると立ち上がって、二人に向かって言う。

「そんじゃご飯にしようか。といってもカレーぐらいしか無いけど」
「おおー! カレーはミルエの大好物ー!!」
「♪♪」

 カレーと聞いて喜ぶミルエとツギ・まちを見て、ナグサは子供だなぁと苦笑した。

 ■ □ ■

 ――大国『オリジナル・カービィ』本城第三部隊詰め所にて、電話が鳴り響く。
 第三部隊隊長ベールベェラは鳴り響く電話に気づき、受話器を取って相手に対応する。

「はい、こちら大国防衛隊第三部隊です」
『ベェラさんですか? 私です。前に大国城下町の図書館司書をしていたクウィンスです』
「クウィンス? どうしてあなたがこちらに?」
『魔道書の件について幾つか尋ねたいのです』

 ベェラは性急に話を進めようとしているクウィンスに、首(体?)を傾げる。
 普段冷静な彼女にしては何処か焦っているように感じるし、こんな時間にかけてくるのも珍しい。

「別にあなたなら構いませんが……一体何があったのですか?」
『単刀直入に言いましょう。本城に厳重警備されている筈の魔道書をミルエ・コンスピリトが保持していました』
「ミルエ? ミルエってまさか世界大戦時に出てきた銃器狂ミルエ・コンスピリト!?」
『声が大きいですよ』

 クウィンスに注意され、ベェラは慌てて手に口を当てる。
 幸い晩御飯の時間ということもあって、ほとんどの隊員がいない。聞かれている心配はなさそうだ。
 ベェラはホッとし、すぐさま冷静さを取り戻してクウィンスに「話を進めるように」と言う。それを聞いたクウィンスは話を進める。

『ミルエ・コンスピリトは赤の他人から魔道書を盗んだと言っていましたが、何か心当たりは?』
「ありますわ、こちらで雇っていた何でも屋です。高い金を払って魔道書を別の場所に移動してもらっていたのですが、襲撃を受けて魔道書を奪われたらしいのです。……まさか襲撃者がミルエ・コンスピリトだったなんて」
『どうして何でも屋に? それに何故魔道書を別の場所に移動させるのですか?』
「ネビュラの予言ですわ。近い内に魔女が蘇る。蘇りを行うのは少年だと」
『あぁ、なるほど。王国には学校に行かずに就職した少年が大勢いますからね』
「その点何でも屋とは何回か依頼していますし、信用出来ますので。……一々高額請求してくるのが癪ですがね」
『そこはどうでもいいです。それよりも本題に入りますよ?』
「えぇ」
『私は魔道書を持ったミルエと図書館内で銃撃戦を行いました。しかしその結果、ミルエは魔道書を落としてしまったらしいのです。ミルエの面倒は私の知り合いに頼んで私は魔道書の捜索を行ったのですが……見つからなかったのです』
「……なんですって?」

 ベェラは己の耳を疑った。
 少なくともクウィンスは不必要な嘘を言う女性ではないし、記憶力の高さ(特に本が関わっている時)は良く知っている。
 だからこそ信じられないのだ。魔道書が見つからないという事実が。
 図書館に無いのなら、魔道書は今何処にある―――?

 ■ □ ■

本来の姿



「あー、疲れた……」

 ナグサは大きなため息をつけながら、自室に戻ってきた。
 晩御飯のカレーはミルエとツギ・まち(ナグサは彼が食べれた事に目を疑ってしまった)に大絶賛だったが、その後のおかわりラッシュが凄かった。好物だからかはたまたカービィだからかは分からないけど、凄かった。三日分はあるだろうカレーが一晩で空になったぐらいだ。
 その後、布団をひいてからミルエとツギ・まちを客室に案内して「ここで寝るように」と指示した。ミルエは軽くシャワーを浴びてから布団にもぐりこみ、ツギ・まちはそのまま布団に入って眠っていった。
 やっと静かになり、ナグサは自分もさっさと寝ようと戻ってきたのだ。何時もなら寝る前に少しだけ勉強しているのだが図書館の片付けの手伝いとミルエ達の面倒を見た後ではやる気が起きない。
 その時、ふと机に違和感を感じて目を移す。そこには見知らぬ一冊の本が立っていた。

「……今度は何?」

 自分でも感心しそうなぐらい疲れきった声を出しながら、机の上にある本を手に取る。
 それは子供の落書きで形成された白いノートブックだった。
 ナグサはノートブックが何故ここにあるのか分からなかった。自分はこんなもの買った覚えもないし、こんな落書きを書いた覚えも無い。
 それならどうしてこんなノートがここにあるのだろうか? そう思いながら、ページを捲ろうとしたその時だった。

「あー! それだよ、ミルエの盗んだ魔道書ー!!」

 いきなり後ろからミルエの大声が出てきた。
 ナグサはいきなりの大声に思わずノートを大きな音を立てて閉じ、瞬時に振り返る。そこには予想通りミルエの姿があった。帽子は外しているらしく、普通のまん丸カービィだ。
 ナグサはその姿に違和感を感じ、ミルエがやってきた理由よりも早くそっちを尋ねてしまう。

「あれ、耳は何処にいったの?」
「付け耳だよ。ってかナッくん、良く見つけられたね」
「へ? あ、いや、これは……」

 ミルエが魔道書らしきノートを見て勝手に感心しているのを見て、ナグサは弁解しようとする。だがそれよりも早くミルエは何処か納得したような口調でとんでもない発言をした。

「でも見つけるの簡単だよね。それ凄く分厚いし、いっぱいいっぱい難しい事書かれてるもん。まるで辞典みたいだもん」
「辞典だって!?」

 それを聞いて驚いたナグサは、咄嗟にノートに目を写す。どっからどう見ても子供が書いた落書きだらけの真っ白なノートだ。まかり間違っても辞典には見えない。
 困惑のあまりナグサはノートとミルエを交互に見てしまう。その姿を見たミルエは不思議がる。

「辞典そんなに見てどうしたの? 魔道書だからびっくりしてるの?」
「……ミルエちゃんにはこれが辞典に見えるの?」
「うん、ナッくんにはどー見えるの?」
「落書きノート」

 素直に答えてみた。ミルエが吹いた。

「……ぷっ。あは、あははははははあはははははは!!!! な、ナッくん! はははひゃははは! そ、それはさ、さすがのみ、ミルエでも、ない、ないよ~!! あははははっははやははははは!! お腹いたい~!!」

 町中に響きそうなぐらいの大爆笑が発生した。
 ナグサは至って普通に答えただけであり、受けを狙ったわけではない。
 だがミルエからすればあまりにも滑稽な答えだったらしく、ばんばんと床を叩きながら呼吸が苦しくなるぐらい爆笑している。

「そ、そこまで笑うか普通……?」

 ナグサが声をかけるも聞こえていない。完全にツボに入ってる。
 そんなに自分はおかしい発言をしたかと思いながら、ノートに目を写す。どっからどう見ても落書きノート。辞典には天地がひっくり返っても見えない。
 ふと疑問に思う。これが例の魔道書とミルエはハッキリ言った。だけどこれはナグサには落書きノート、ミルエには小難しい辞典に見えている。否定の魔女を封印している魔道書にしてはおかしすぎる。ならば、こう考えるのが自然だ。

「これそのものに魔法がかかっているのか?」

 そう呟きながら、パラリとノートのページを捲る。中身は表紙同様落書きだらけだ。だけどナグサは動じない。
 ぱらりぱらりとページを捲っていく。全部子供の落書き。だけどナグサは飽きる事無く、横でまだ爆笑しているミルエを完璧無視し、一心にページを捲る。
 カービィをイメージして書いただろう沢山の丸が十字架なのか剣なのか良く分からないものをもって戦っている絵。他にも色々な羽が生えたカービィの絵、目にゴーグルをつけたり、頭に耳が生えたり、と大雑把な特徴があるカービィの絵もある。
 真っ白なドレスを身に着けた人間の絵。手には何故かハリセンを持っている。多分扇子を意識しているんだろう。
 沢山のカービィとドレスを着た人間が戦う絵。人間が異様にでかくて何か怖い。
 真っ赤なクレヨンを塗って塗って塗りまくっている絵。ところどころに手やら足やらの落書きがある。
 死という字を二ページ丸まる書いているページもあった。これが一番雑だけど、色が赤黒くて逆に恐ろしかった。

「悪趣味……」

 落書きの内容に思わず呟いてしまう。世界大戦当時をイメージしているのだろうか?
 絵が下手だからマシというわけでもなく、寧ろその安直さが恐怖を強めている。その当時の様子をハッキリと覚えているから尚更だ。
 次に捲ったページは爆弾が爆発した絵。ご丁寧に体の一部が吹き飛んでいるのも付け加えられている。悪趣味にも程がある。 どこにも魔女の復活方法なんて書いていないし、読んでいるだけで気分が悪くなってくる。こんなのどんな意味があるんだ? まさか騙されているんじゃないんだろうな。……騙されている?
 そこまで考えてからふとある事に気づき、まだ笑い転げているミルエにすぐさま話しかける。

「ミルエちゃん!!」
「ふにゃ!? なになになに!?」
「悪いけど、このページ読んで!! 今すぐ!!」
「えぇ!? な、何で?」
「何でもどうしてもない! 良いから早く!!」

 そう言ってナグサは適当に開いたページをミルエにグイッと見せ付ける。
 ミルエは困惑しながらも、途切れ途切れながらに読み始めた。ナグサからすれば落書きしかないページを懸命にだ。

「えーと、かつては生ある者だったが死した時、魔女の魔力によって再び……んだ生を……。えと、二つに分けるならふせいって読めるけど、一緒だと分かんないや……」

 すっごく困った顔をして、ナグサを見上げるミルエ。ナグサはそれを見て、己の推測が正しいと結論付ける事が出来た。

「読めないならもういいよ。分かりたい事は分かったから」
「え、そうなの!? ナッくんすごーい!!」

 意味が分かっていないにも関わらず、素直に褒めるミルエはこうして見ると中々可愛いものがある。慣れてきたのかナグサは「ありがと」と言ってから、再びノート……魔道書を手に取る。

「僕が知りたいのは過去が描かれた絵でも、魔女の魔力による産物でもない。……この魔道書の本来の姿だ!」

 ナグサはそう深く強く思いながら、再びページを捲る。
 直後捲られたページから黄金色の渦巻く風が激しく巻き起こる。

「うわっ!?」
「きゃー! なになになにー!?」

 あまりにも眩し過ぎる、色がついているありえない風に二人は思わず目を瞑ってしまう。
 激しい風が戸棚を、机を、ベッドを、窓を、扉を、二人を、部屋全体を揺らす。まるでこの部屋にだけ巨大な台風がやってきたみたいだ。
 吹き飛ばされないようにその場に踏ん張る二人。
 黄金色の渦巻く風に乗るように、声が聞こえてきた。

『あぁ、何と可愛らしい好奇心。何と可愛らしい意地。何とも可愛らしい。しかしとても愚か。それ故に、それ故にやってはいけない事をしてしまった。だけども褒めてやろう。褒めてやろうぞ。汝等は人助けをした。だがそれと同時に、大罪人と化した。ふふふ、ふふふふふふふふふふふふふふふ。意味が分かるか? 愚かな童よ。無知な娘よ。妾の言う意味が分かるか?』

 聞いた事も無い女の声。声色こそ幼子を宥める母親のようだが、伝わってくるのは母性じゃない。感じた事の無い威圧感と恐怖だ。
 この瞬間、ナグサは己が何をやってしまったのか、理解してしまった。

 ■ □ ■

 ナグサが寝室に入ったのと同じ時刻、ベェラとクウィンスは魔道書に関して話を続けていた。
 クウィンスはベェラに事件の概要を簡単に説明していく。ベェラはそれを黙って聞いている。

『戦闘で散り散りになった本を片付けていけば自然に見つかると思っていたのですが、そのような本は出てきませんでした。あのような真っ白な本、探せばすぐに見つかると思っていたのに』
「真っ白な本? クウィンスにはそう見えたのですか?」
『どういうことですか?』
「……あの魔道書、見る人によって姿形が変わっているんです。いえ、正確に言うと個人個人に幻を見せ付けていて、本当の姿を誰にも見せないのです。自分ならば確実に読まないだろうジャンルの本という幻を」

 意味があるのか無いのか分からない。
 ベェラは自分で説明しながらため息をする。その言葉を聞いたクウィンスはふと疑問に思ったのか、少し尋ねてみた。

『確実に読まない……。つまりベェラさんにはどう見えたのですか?』
「乙女の口から言わせるつもりですか!? さすがのクウィンスでも怒りますよ!!」
『その発言でジャンルが一瞬で分かりました』

 ベェラの憤怒と多少の照れが入った叫びを聞き、クウィンスはベェラが何を見たのか一瞬で察したその時だった。とんでもなく大きな放送が城全体に響き渡ったのは。

『緊急連絡! 緊急連絡! 封印場から黄金の風が渦巻き、魔女の笑い声が響いている!! 繰り返す! 封印場から黄金の風が渦巻き、魔女の笑い声が響いている!!』

 何時に無く焦った放送はベェラの顔を青くさせた。
 封印場、黄金の風、魔女の笑い声、この三つの単語だけで何が起こったのかわかってしまった。それ即ち――否定の魔女の復活。
 ベェラは最悪の事態に動揺しながらも慌ててクウィンスに叫ぶように話しかける。

「クウィンス! 今の放送聞こえました!?」
『えぇ、バッチリ聞こえました。黄金の風と魔女の笑い声、ここまで聞ければさすがに分かります』
「クウィンス、魔道書は見つかっていないんでしょう!? それならばどうして!?」
『私が聞きたいぐらいですよ!』

 ベェラの問い詰めにクウィンスは乱暴に返す。
 二人の女性、否、城中の人々が放送によって困惑に満ちていくその時だった。



 ――――黄金の風が世界中に吹いたのは。



黄金の風と否定の魔女



 突風は波を大きく揺らし、波紋を導き、荒れさせていく。木々が今にも地面から飛んでいってしまいそうなぐらい揺れていく。
 多くの建造物が地震でも来たかのように左右に揺れていく。看板や置物があまりの風に耐え切れず、宙を飛んでいってしまう。カービィや動物まで飛んでいる。
 建物の中にまで突風が入ってくる。窓もドアも開けていないというのに、激しい風が人々を叩き付けている。
 それはあまりにも突然すぎる不可解な風。
 人々は黄金の風に困惑し、それぞれ驚きを隠せなかった。

「おいおい、この風って世界大戦の時と同じじゃないか?」
「間違いなくそうでござろう。タービィ、吹き飛ばされないよう気をつけるでござるよ」
「分かってるぜよ。そういうお前もご自慢の茶碗がふっ飛ばないように」

『ログウ! saberカービィ!! 無事? 飛んでない!?』
「なんとかね。saberがつかんでくれてるから天井にぶつからなかったよ」
「無事。ZeOは?」
『電脳空間にいるから平気! 今、豪鉄の方に連絡してるとこ!! この状況で一番やばいのは空にいる連中だから!!』

「何々この風!? 科学的に解析できるかなー!?」
「ジル、何を馬鹿な事言ってんの!? ……ってダム・Kが空に飛んだー!!」
「ジャガール、それマジ? あ、うわ、派手にぶっ飛んでる!!」

「夜影、上手く風に乗れよ。バランス崩したら一発でアウトだ!」
「わ、分かりましたー! でもヴェイブ先輩、これきついですー!!」

「ちょ、吹っ飛ぶ! これは吹っ飛ぶ!!」
「絵龍ちゃん、大丈夫? あ、出来れば前に話した件してくれないかい?」
「クレモトさん、今はそれどころじゃない! ってか何を平然としてるんすかー!!」
「あ、OK? ありがとう。交渉成立だね」
「人の話を聞けえええええええええええ!!」

「ちょ、ユニコスさん! 剣が、剣がこっちに飛んでくるんですけどー!?」
「分かってるよ、シーヤ! あ、傷はつけないでくれよ!?」
「無理無理無理無理無理無理無理無理!! あーもう、これなら手伝いに来るんじゃなかったー!!」

「魔女が目覚めた……。エンペラー様、どうやら予言が」
「言うな、ネビュラ。この風が吹いてしまった以上、わし等が後悔している暇は無い。それよりもやるべき事が山ほどある」
「そうですね。やるべき事は沢山あります」

「何で、建物の中にまで……! きゃああああああ!!」
「セラピム、早く俺の手につかまって!!」
「コーダさん! セラピムさん! この風、予想以上にきついんですけど……!!」
「分かっている、フズ! でも今は耐え切らないと!!」

「再び目覚めたか、魔女が」
「イクステオ様、どうするんですか? このままじゃ第二次世界大戦起きちゃいますよ!?」
「慌てるな、クゥ。既にラコニアを向かわせている。我等が出るのは本当にどうしようもない時よ」

「全部隊怯むな! 何としてでも城と城下町の被害を最小限に抑えてみせろ!!」
「イブシ、張り切ってるねー。そんじゃ僕も頑張らないとね」
「飛燕、のんきに言ってる場合か?!」
「ルヴルグ、怒鳴らないで。焦りは負け、この風は情報にあるから何とかなるよ」
「相変わらず落ち着いたお方ですね……」
「いや、あの人の場合のんきが正解じゃないか?」
「アメル! アカービィ! お前等ものんきにするな!!」
「わーってますよ、ホワイトさん!!」

「おいおい、この風が出たって事は……」
「ウチ等の仕事が増えるって事やないか! キリア、どないすんの!?」
「俺に言うなよ、デス・スター! こーいうのはカーベルやムーン・ライトの方が詳しいっての!!」

「! !!」
「Σ、大丈夫。大丈夫、だから……」
「フル、無理に自分を落ち着かせなくていい」
「-さん……」
「怖いのは、みんな一緒。私が二人を支えておくから大丈夫」

「もふー! もふもふー!!」
「も、もふうううう!!」
「……モフモフ達が空を飛んでる光景って初めてだ」
「フロース、言ってる暇、無い! 非難!」
「分かってるよ、モフモフの通訳さん」

「キャアア! 宝石ちゃん飛ばないで。お願いだから飛ばないでえええええ!!」
「ねぇ、それ宝石とトゥルのどっちなの!? 答えて、フェラーリイイイイ!!」

「うわ、こりゃやばいわね……。アクスちゃん、患者さん迎え入れる準備は出来てる?」
「出来てますよ。ナース先輩! キルさん達はどうですかー!?」
「僕と颯は何時でも行けれるよ! エレクは!?」
「何時でもいけますよ。いやぁ、まさか世界大戦と同じ時の風が吹くなんて……ヘヘ」
「ぶーっ!!(笑い事じゃないー!!)」

「風が吹いた。風が吹きやがった。魔女の時間だ。魔女が再び現れやがった!!」
「嫌に楽しそうだなぁ、オルカ! 折角の戦いの時間を邪魔されてるっていうのによ」
「おいおい、レヴィ。お前は馬鹿か? 魔女が現れたって事はでっかい殺し合いがまた始まるんだぜぇ!?」

「ウェザー、早くそっちの花畑にシーツを! ちょっとでもいいから花を守って!!」
「分かってます、シードさん! でも油断してたらこっちが……!!」

「このカゼ……セカイタイセンとおなじ……。また、たたかうの……?」
『EM-05! 呆然としてる暇があるなら飛ばされんじゃないわよ!』
「わかってる、アルケー!」

「酷い風だな……。ポチ、飛ばされるなよ」
「ソラもね! でもさ、建物の中でもこれって酷くない?」

「嫌だなぁ、世界大戦。折角のお人形がバラバラになっていっちゃうじゃないか。嫌だなぁ」
「……あなたの頭にはそれしかないの!?」
「無いよ、ちるちゃん。狂った御人形屋のローレンはそれしか無いんだよ」

「魔女が出ちゃった! どうしよどうしよ!」
「どうしよう。この時計台破壊されないかな!?」
「落ち着いて、クノック。ノノック。この時計台は祝福を受けてるから、多分どうにかなるよ」

「あぁ、風のせいでゲームがバグった!?」
「ピコ、言ってる場合じゃない! 布団がふっとんでるから!!」
「……リュウ、それすっごく寒い……」
「って倒れないでー!?」

「一体どこの馬鹿がこんな風を吹かせたのだろうな」
「拙者に聞かれても分からんでござる。それよりも今はイブシ殿の下に行き、指示を聞くのが良いと思うぞ。五右衛門よ」
「承知した、外郎よ」

「これ、世界大戦の時の風じゃないか! ラルゴ、これ……」
「……奪った奴が魔道書を読んだ。答えはこれしかないだろ、カタストロ」
「一体何を考えてるんだ、読んだ奴は……?」

「否定の魔女が復活か。これは隠居生活どころじゃないかもね」
「マナ氏、どうしたの?」
「大国に行こうって思ったんだよ、アリさん」

 黄金の風は魔女が現れる合図。
 六年ぶりに吹いたその風は、忘れかけていた魔女を思い出すには十分すぎる程だった。

 ■ □ ■

 世界中に激しい黄金の風が吹く中、一足早く風が止み始めた場所があった。
 それはナグサの部屋。魔道書が現在存在する場所。
 風が穏やかになっていくにつれてナグサとミルエは目を開き、魔道書へと顔を向ける。そこにあるのは落書きノートでも小難しい辞典でもない。
 黄金色で書かれた奇怪な魔法陣が表紙に飾られている真っ白な本が宙に浮いている。その隣には風が吹いているにも関わらず、空中に真っ白なカービィがいた。飛んでいるわけでも浮いているわけでもない。空中でしっかりと立っている。
 半透明のベール、ベールを飾り付ける二つの真っ白なレースのリボン、両手両足にも白いレースのリボンが飾りつけられている。スカートのような真っ白いレースの飾りも身に着けており、花嫁を連想させる姿をしている。唯一花嫁と違うのは持っているのが花束ではなく、白い扇子だということ。
 美しい。ナグサとミルエは真っ白なカービィを見て思ったのは、美しい。それだけだった。
 花よりも美しく、魔法よりも幻想的な雰囲気を持つ真っ白なカービィは優しく微笑みながら二人に話しかける。

「……良くぞ妾を封印から解いてくれた。礼を言うぞ、ナグサ。ミルエ・コンスピリト」
「へ? どーしてミルエとナッくんの名前が分かったの? さてはエスパーか!?」
「あ、あの……まさか、あなたは……」

 ミルエが驚くのを他所に、ナグサは恐る恐る話しかけようとする。
 真っ白なカービィはナグサの言いたい事が既に分かっているのか頷き、己の名を名乗った。

「左様。妾は否定の魔女トレヴィーニ・フリーア・フェイルモーガン。世界大戦時に混沌を呼び起こした張本人よ」

 ――――六年の時を得て、否定の魔女が蘇った。




  • 最終更新:2014-11-08 18:37:29